『南部の黒人(The Negro in the South)』は、アメリカの社会学者チャールズ・S・ジョンソン(Charles S. Johnson)によって1934年に著された研究書です。本書は、20世紀初頭のアメリカ合衆国南部に暮らすアフリカ系アメリカ人の社会的・経済的状況を包括的に分析したものであり、当時の人種問題を理解するうえで重要な文献とされています。
出版年と時代背景
1934年は、世界恐慌(1929年〜)の影響が色濃く残り、アメリカでニューディール政策が展開されていた時期にあたります。南部の農村部では小作農制度(シェアクロッピング)のもとで多くのアフリカ系アメリカ人が深刻な貧困に置かれており、こうした実態を学術的に記録しようとする動きが社会学者たちの間で高まっていました。本書はそうした流れの中で生まれた研究成果の一つです。
著者チャールズ・S・ジョンソンとは
ジョンソンは、テネシー州ナッシュビルのフィスク大学(Fisk University)で社会学を教え、後に同学の学長にも就任した著名な社会学者です。シカゴ大学で社会学を専攻し、都市への黒人移住や南部農村社会に関する実地調査を数多く手がけました。同年に刊行された『プランテーションの影(Shadow of the Plantation)』などの著作でも知られ、南部黒人社会の実証研究の先駆者として高い評価を受けています。
本書の内容と意義
本書は、南部におけるアフリカ系アメリカ人の生活実態――労働条件、教育、住宅、健康状態など――を幅広く取り上げ、差別と貧困の構造を調査データや聞き取りに基づいて明らかにしました。単なる統計資料にとどまらず、後の社会改革運動や公民権運動の基盤となる知見を提供した点でも、その歴史的意義は大きいと言えます。
まとめ
『南部の黒人』は1934年に刊行された、チャールズ・S・ジョンソンによる南部アフリカ系アメリカ人社会の包括的研究書です。大恐慌期の南部社会を学術的に記録した本書は、今日においてもアメリカの人種問題の歴史をたどるうえで貴重な資料となっています。