南アメリカの歴史

リンカーンは南北戦争の終結時にバンドに「ディキシー」を演奏させたのか?

アメリカ南北戦争が終結した際、エイブラハム・リンカーン大統領がバンドに南軍の愛国歌「ディキシー(Dixie)」の演奏を命じたという逸話がよく語られています。しかし、この話を裏付ける確かな史料は確認されていません。

流布している逸話の内容

1865年4月、ロバート・E・リー将軍率いる南軍の降伏の知らせがワシントンに届いた頃、群衆がホワイトハウス前で祝賀の演奏を行い、リンカーン自らが「ディキシー」の演奏を所望した――そんなエピソードが語り継がれてきました。かつての敵方の歌を演奏させることで、南北の和解を象徴づけようとしたのだという解釈です。

確かな証拠は存在しない

ところが、歴史的な検証によれば、この出来事を直接裏付ける信頼できる一次資料は見つかっていません。当時の断片的な新聞報道や、後年になって語られた回想をもとに、話が少しずつ脚色されながら広まった可能性が高いと考えられます。つまり、リンカーン自身が実際にそのような発言や指示を行ったことを示す決定的な記録は存在しないのです。

「ディキシー」とはどんな曲か

「ディキシー」は1859年にダニエル・デキャター・エメットが作曲した楽曲で、南北戦争中には南軍側の事実上のテーマソングとなりました。だからこそ、北軍の指導者であるリンカーンがこの曲を選んだという話は、分裂した国家の再統一を象徴する美談として多くの人の心をつかんだのでしょう。

まとめ

魅力的な逸話ではあるものの、リンカーンが内戦終結時にバンドに「ディキシー」を演奏させたという確固たる証拠はありません。歴史上の有名なエピソードであればあるほど、出典の信頼性を丁寧に確認することが大切です。