南アメリカの歴史

タイドウォーター地方とバックカントリーの入植者は何が違う?植民地時代アメリカの2つの社会を徹底比較

タイドウォーター地方の入植者とは

タイドウォーター(Tidewater)は、バージニア州とメリーランド州の沿岸部に位置する地域を指します。大西洋に面したこの低地帯は、17世紀から18世紀にかけてイギリス系入植者が最初に定住した場所であり、植民地時代アメリカ経済の中心地として発展しました。

経済の基盤:タバコ・プランテーション

タイドウォーター地方の経済は、タバコ・プランテーション(大規模農園)が柱でした。肥沃な沿岸平野と川による輸送の便を生かし、ヨーロッパへ輸出するタバコの栽培で莫大な利益を上げていました。

階層化された社会構造

タイドウォーターの社会は強い身分格差を持つヒエラルキー構造でした。頂点に立ったのは少数の大プランター(農園主)エリート層であり、その下には多数の奴隷化されたアフリカ系アメリカ人が位置していました。彼らこそがプランテーション経済を支える労働力の中核だったのです。

政治的な影響力

タイドウォーターのプランターたちは、バージニア植民地議会(House of Burgesses、バージニア代議院)において大きな政治力を握っていました。経済的富がそのまま政治的発言力につながっていたのです。

バックカントリーの入植者とは

一方、バックカントリー(Backcountry)は、同じバージニア州やメリーランド州の内陸部、つまり海岸から離れた山麓地帯を指します。ここには後にスコッチ・アイリッシュ系やドイツ系移民などが大量に入植しました。

経済の基盤:小規模農業と狩猟

バックカントリーの経済は、自給自足を基本とした小規模な農業と狩猟が主体でした。大規模な商品作物の栽培ではなく、家族の生活を支えるための生産が中心だったのです。

より平等主義的な社会

バックカントリーの社会は、タイドウォーターと比べてはるかに平等主義的でした。自由な白人入植者の割合が大きく、奴隷制への依存度も低かったため、貧富の差は沿岸部ほど極端ではありませんでした。

限られた政治力

しかし政治面では、バックカントリーの入植者はタイドウォーターのプランターたちに比べて発言力が大きく劣っていました。政治権力は沿岸部のエリート層に集中していたのです。この不満は、後の植民地社会における対立の火種にもなりました。

両者の主な違いをまとめると

タイドウォーターとバックカントリーの入植者の違いは、経済活動・社会構造・政治力の3つの側面に集約されます。

  • 経済:タイドウォーターは輸出用タバコの大規模プランテーション、バックカントリーは自給的な小規模農業と狩猟。
  • 社会:タイドウォーターは大プランター層と奴隷人口からなる厳格な階層社会、バックカントリーは自由な白人入植者が多く、より平等な社会。
  • 政治:タイドウォーターのプランターはバージニア代議院で強い政治力を持ち、バックカントリーの入植者は相対的に弱い立場にあった。

つまり、タイドウォーターの入植者はより裕福で政治力も高く、階層化された社会を築いていたのに対し、バックカントリーの入植者は経済的には貧しいものの、より平等で自立した社会を形成していたといえます。この二つの地域社会の対照性は、アメリカ独立戦争前夜の植民地社会の多様性と緊張関係を理解するうえで重要なポイントです。