リチャード・ハクルート――アメリカ植民の夢を支えた男
リチャード・ハクルート(Richard Hakluyt)は、16世紀イギリスを代表する作家・地理学者であり、北アメリカ植民という国家の夢を持続させる上で決定的な役割を果たした人物です。彼の貢献は、著作活動と実際の行動という両面にわたりました。ここでは、ハクルートがいかにしてアメリカ植民への情熱を維持させ続けたのかを詳しく見ていきます。
著作による貢献
1. 『アメリカ発見に関する諸航海(Divers Voyages Touching the Discovery of America)』(1582年)
ハクルートの最も有名な著作である本書は、イギリスおよび外国の探検家たちが残した一次資料、航海記録、報告書を集大成したものです。当時のイギリス読者に対して、「新世界」と呼ばれたアメリカ大陸の全体像と、そこに秘められた植民の可能性を初めて体系的に伝えました。
2. 『イギリス民族の主要な航海・旅行・交易・発見(The Principal Navigations, Voyages, Traffiques, and Discoveries of the English Nation)』(1589年)
前作『諸航海』を大幅に増補・改訂した大著で、より広範な探検と航海の記録を網羅し、イギリスの海洋活動の歴史を包括的に描き出しました。ハクルートはこの著作を通じて、植民地化がもたらす経済的利益と、アメリカへ進出することでイギリスが獲得できる栄光を力強く訴えかけました。
実践的な行動による貢献
1. 植民活動の熱心な推進者
ハクルートは、とりわけ北アメリカにおけるイギリス植民事業の積極的な推進者でした。ウォルター・ローリー卿をはじめとする影響力のある人物たちと頻繁に書簡を交わし、植民地建設構想への支援を呼びかけ続けました。
2. バージニア会社の顧問
1606年に設立された合同会社バージニア会社の顧問を務め、北米初の恒久的イギリス入植地となるジェームズタウンの建設を支援しました。同社の指導者たちに対して助言や専門知識、歴史的知見を提供し、入植事業の成功に大きく貢献しています。
3. 入植者の募集
アメリカでの事業に参加する人材の募集にも深く関わりました。大工仕事や農業など、植民地経営に不可欠な技能を持つ人々を積極的に探し出し、新天地への渡航を奨励しました。
4. 歴史記録の保存
航海や探検に関する歴史資料を綿密に記録・編纂したことも、ハクルートの重要な功績のひとつです。これらの記録は貴重な知識と情報を後世に伝えるだけでなく、アメリカ植民の歴史や将来性に関心を持つ次世代の人々にとって欠かせない情報源となりました。
まとめ
このようにリチャード・ハクルートは、著作活動、植民構想の提唱、バージニア会社への助言、入植者の募集、そして歴史記録の保存といった多方面にわたる貢献を通じて、アメリカ植民の夢を絶やすことなく受け継がせました。彼の努力こそが、イギリス国民の「新世界」への関心を育み、後に北米へと展開される入植事業の礎を築いたのです。