1798年に成立した外国人・治安諸法(Alien and Sedition Acts)に対し、トーマス・ジェファーソン(民主共和党、後の大統領)とジェームズ・マディソン(民主共和党、後の大統領)は強く反対しました。その理由は、以下の4つの観点から説明できます。
1. 言論・出版の自由の侵害
両氏は、この法律群を憲法修正第1条が保障する言論・出版の自由への明白な侵害とみなし、批判しました。
特に治安法(Sedition Act)は、合衆国政府、政府高官、あるいは議会に対する「虚偽の、中傷的な、または悪意のある」文書を著す行為を犯罪として処罰するものであり、批評家たちはこれが健全な政治的批評や公開の議論を窒息させると主張しました。
2. 政治的野党への脅威
ジェファーソンとマディソンは、この法律群を、連邦党主導の政府が民主共和党の反対勢力を黙らせるために用いた政治弾圧の道具であると捉えていました。
・特定の一政党に有利となるよう選択的に適用されうる点が危険であると考えられました。
・実際、治安法は民主共和党に同情的な立場を取る新聞編集者や印刷業者を主な標的として運用されました。
3. 戦時においても不要な立法
両氏は、フランスとの擬似戦争(準戦争)の最中であったとしても、扇動行為は従来のコモンロー(普通法)の原則に基づけば十分に処罰可能であり、新たな法律は過剰な措置にすぎないと考えていました。
4. 州の権利の侵害
マディソンとジェファーソンは、本来的に地方・州の内部問題とされる事柄に連邦司法が介入することを、連邦制の精神と州の権利(states' rights)に対する越権行為であり、重大な違反であるとみなしました。