歴史上最も代表的なジェスチャー――それは「スキピオの慈悲」
いいえ、モナ・リザのあの微笑みではありません。ここでご紹介するのは、「スキピオの慈悲(La Clemencia de Escipión)」として知られる歴史的逸話です。
逸話の背景
この物語を後世に広めたのは、歴史家ポリビオスとティトゥス・リウィウスです。大スキピオ(スキピオ・アフリカヌス)によるカルタゴ・ノウァ(現在のスペイン南東部の都市カルタヘナ)征服の後、勝者であるローマの優越性と寛容さを称え広める意図があったことは明らかでしょう。
カルタゴ・ノウァ陥落後、ローマ兵の一団は戦利品としてスキピオにあるイベリアの王女を差し出しました。史書によれば、その娘は息をのむほどの美しさだったといいます。対面したとき、若い娘は自分が勝者の手中の玩具にされると思い込み、勇気を振り絞ってこう告げるのが精一杯でした。「私はケルトイベリア人の指導者ルキウスと婚約しています」と。
このことを知った父親は大金を工面して身請け金を用意し、娘を取り戻すためにスキピオのもとへ向かいました。ところが予想に反して、スキピオは娘を父親のもとへ返し、さらに身請け金はそのまま娘の婚礼の持参金として使うよう命じたのです。この予期せぬ厚意に感銘を受けたルキウスは、恩返しとして自らの兵士とともに補助部隊となり、スキピオに仕えることになりました。
芸術のさまざまな分野への影響
この人道的な行為は、時代を超えて多くの芸術分野で表現されてきました。
彫刻
- 15世紀には、宝石細工や彫刻、カメオにこの主題が刻まれました。
絵画
- 15世紀イタリアの画家ピントゥリッキオの板絵
- 1505年、ヴェネツィア派の巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニによる大作
- 17世紀、フランドルの画家アンソニー・ヴァン・ダイクによる2点の油彩
- フランスのニコラ・プッサンとルモワーヌによる2点の油彩
- 18世紀、ヴェネツィアのティエポロによる大作
- 19世紀、スペインのフェデリコ・デ・マドラーソの作品
オペラ
- 1664年から1815年までの間だけでも、実に19作ものオペラがこの題材で作曲されました。作者にはフランチェスコ・カヴァッリ、アレッサンドロ・スカルラッティ、トマゾ・アルビノーニ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、ヨハン・クリスティアン・バッハといった錚々たる名前が連なります。
文学
- 「スキピオの慈悲」を題材に描いた文学作品は数多く存在します。

スキピオの慈悲

スキピオの慈悲 2
写真:Wikipedia
出典:『Panta Rei』および『Spain, a new History』(ホセ・エンリケ・ルイス=ドメネク 著)