ヨーロッパの歴史

死の乾杯――グラスを合わせる習慣に隠された意外な起源

乾杯の際にグラスを軽く合わせる習慣には、その起源をめぐって実にさまざまな説が存在します。中でも最も印象的だとされるのが、ここでご紹介する「死の乾杯」と呼ばれる逸話です。

中世の宴は命がけの場だった

中世の祝賀会や宴会の多くは、単なる社交の場ではありませんでした。敵対者を一か所に集め、そこで排除してしまうための機会として利用されていたこともあったのです。そして、最も巧妙で、かつ直接的な危険を避けられる方法こそが「毒」でした。

そこで、グラスの中身(ワインやビール)に毒が仕込まれていないことを証明するために、主人は客に対し、自分のグラスへ少しばかり飲み物を注ぎ分けることを許しました。こうすることで、「この酒は安全だ」という証しになったわけです。

信頼が生んだ新しい儀式

やがて客が主人を完全に信頼するようになると、わざわざ注ぎ合う必要はなくなりました。代わりに、グラス同士を軽く打ち合わせるだけで、互いの誠意と安全を確認できるようになったのです。

こうして、乾杯の前にグラスを合わせるという儀式が確立されたといわれています。

結局はすべて「信頼」

人生における多くのことと同じように、この習慣の本質もまた、信頼にあるのかもしれません。今日私たちが何気なく交わしている乾杯の裏には、こんなドラマチックな歴史が隠されているのです。

死の乾杯――グラスを合わせる習慣に隠された意外な起源