ヨーロッパの歴史

小麦を金に変える!?英国特許第14,204号に秘められた錬金術の夢

小麦から金を作る特許とは?

かつてご紹介したヘニッヒ・ブランド(Hennig Brand)は、妻の持参金によって生活の心配がなくなったことから、錬金術という高貴な芸術に没頭したドイツ人商人です。彼は「尿を蒸留すれば黄金が手に入るはずだ」と信じて実験を重ねた結果、黄金こそ手に入りませんでしたが、代わりにリンを発見することになります。

そして今日ご紹介するのは、同じような啓蒙的な精神を持つもう一人の人物。小麦を金に変えることを目論み、なんと正式に特許まで登録してしまったのです。

小麦を金に変える!?英国特許第14,204号に秘められた錬金術の夢

英国特許第14,204号の内容

1884年10月27日付で交付された英国特許第14,204号は、ハリー・フェル(Harry Fell)に対して与えられたもので、その目的はまさに「小麦を金に変えること」でした。特許に記載された方法は、およそ次のようなものです。

小麦粒と細かく刻んだ藁(わら)を半々の割合で混ぜ合わせます。この混合物を水の中に浸し、59℉(約15℃)の温度で10時間マセレーション(浸漬)させます。10時間後、混合物を濾過し、浅い素焼きの壺に入れて60℉(約15.5℃)で24時間静置します。すると、液体の表面を覆う薄い膜が……なんと黄金になっていたというのです。

科学と錬金術が交錯した時代の記録

もちろん、この方法で本当に金が生まれることはありません。それでも19世紀後半のヨーロッパでは、錬金術的な夢は依然として多くの人々を魅了していたようです。近代的な制度である「特許」と、古い時代の夢である「錬金術」がひとつの文書の中に同居している、時代の移り変わりを感じさせる興味深い事例といえるでしょう。

ところで、筆者も早速この混合物を静置する段階に入りました……残りあと12時間です。もし明日、何も書いていなかった場合は、どうか私を探さないでください。

出典:Science誌、『The Stupid History of the Human Race』(Bob Fenster)