ヨーロッパの歴史

ジャン=ジャック・ルソーは奴隷が自由になれると信じていたのか?――その思想の核心を解説

結論から言えば、ノーです。フランスの啓蒙思想家ジャン=ジャック・ルソー(1712–1778)は、奴隷が真の意味で自由になることは決してできないと考えていました。彼にとって奴隷制とは、人間の生得権である自由を根本から否定する、専制(デスポティズム)の最たる形だったのです。

なぜルソーは奴隷制を否定したのか

ルソーの思想において、自由は人間が人間たるゆえんの中核を成すものであり、譲り渡すことも奪われることも許されないものです。主著『社会契約論』(1762年)は、「人は自由な状態で生まれてくるのに、いたるところで鎖に繋がれている」という有名な一節で始まることでも知られています。

力は権利を生まない

ルソーは「力は権利を作らない」と明言しました。征服者が被征服者を鎖で繋いだとしても、それは正当な権利の行使ではなく、単なる暴力にすぎません。したがって奴隷制は、当事者の合意や契約によって正当化できるものではなく、奴隷から自然権と自由を剥奪する不当な専制の形態だとみなしました。

自由の放棄は人間性の放棄

さらにルソーは、自由を手放すことは自らの人間性を手放すことに等しいと論じました。子どもは未熟な間だけ親の監護下に置かれ、成人とともに自由になるように、人間が永続的に他者の支配下に置かれる合理的な根拠は存在しない、というのが彼の立場です。

まとめ

ルソーにとって、奴隷という身分に置かれた人間が真に自由な存在になることはありえません。奴隷制は自然権と自由を否定する専制であり、それ自体が不正義の産物だからです。こうした彼の自由観は、後のフランス革命や近代の人権思想に多大な影響を与えることとなりました。