世界最古の金属貨幣――リディアのエレクトラム貨
現在知られている中で最も古い金属貨幣は、紀元前7世紀に小アジア(現在のトルコ西部)に栄えた古代王国リディアで鋳造されたものとされています。
この貨幣には、エレクトラム(琥珀金)と呼ばれる、金と銀が自然な割合で混ざった天然の合金が使われていました。エレクトラムはパクトルス川などで砂金として産出され、輝きが美しいことから「白金」とも呼ばれて珍重されました。
リディア王クロイソスの時代には、金貨と銀貨を分けて鋳造する技術も確立され、この貨幣制度はギリシャの各ポリスへと広まり、地中海世界の経済発展の基盤となりました。表面にはライオンや雄牛などの意匠が打たれ、重量と品質を保証する役割を果たしていました。
紙幣の起源――中国・唐代の「飛銭」
世界で最初の紙幣は、中国の唐代(618年~907年)に登場しました。当時使われていたのは「飛銭(ひせん)」と呼ばれる証文で、桑の樹皮の繊維から作られた紙に記されていました。
飛銭は現代の為替手形に近い仕組みで、商人が長距離の商取引を行う際、重い銅銭を運ぶ代わりに都で預け入れ、地方の窓口で引き出すことができる便利な仕組みでした。「空を飛ぶように素早く資金を移せる」ことからこの名が付いたと言われています。
宋代以降の紙幣の発展
その後、宋代(960年~1279年)に入ると、四川省で「交子(こうし)」と呼ばれる本格的な紙幣が発行されるようになりました。当初は民間の商人による発行でしたが、11世紀初頭には政府が発行権を掌握し、これが世界初の官営紙幣とされています。
さらに元代(1271年~1368年)には、「交鈔(こうしょう)」と呼ばれる紙幣が広く流通しました。モンゴル帝国の広大な版図を背景に、紙幣はユーラシア各地にも伝わり、マルコ・ポーロが『東方見聞録』で中国の紙幣制度を紹介したことで、ヨーロッパにもその存在が知られるようになりました。
まとめ
金属貨幣は紀元前7世紀のリディアで、紙幣は唐代の中国でそれぞれ誕生しました。どちらも商取引の利便性を高めるために生まれたものであり、その後の世界経済の発展に大きな影響を与えました。現在私たちが当たり前に使っている「お金」の原型は、こうした古代の知恵から始まったのです。