イギリスでポンドを「クイド」と呼ぶ理由とは?
イギリスでは、英国ポンド(pound sterling)のことを口語で「クイド(quid)」と呼びます。アメリカ人がドルを「バック(buck)」と呼ぶのと同じように、日常会話でごく普通に使われている愛称です。例えば「10クイド(10 quid)」と言えば10ポンドを意味し、パブでの支払いや友人との会話など、あらゆる場面で耳にします。
この呼び名がいつ、どこから生まれたのかについては正確な記録が残っておらず、複数の語源説が存在します。ここでは代表的な説を紹介します。
1. ラテン語「quid pro quo」由来説
最も有力視されているのが、ラテン語の成句「quid pro quo(何かの代わりに何か=等価交換)」に由来するという説です。貨幣は本来、モノとモノを交換するための手段であり、この「交換」の概念から「quid」がポンドの俗称として定着したと考えられています。18世紀にはすでに使われていたとされる記録も残っています。
2. ラテン語「quid(何か)」由来説
もう一つの説は、ラテン語の「quid(何、何か)」という単語そのものに由来するというものです。「今手元にあるのは何か?=お金」という感覚で、ポンドを指すスラングとして使われるようになったという考え方です。これは、アメリカ英語の「buck」がかつて交換媒体として使われた鹿の皮に由来するとされるのと、よく似た流れです。
3. 古英語「cwyd」由来説
古英語の「cwyd(小さな一片、少量の何か)」に由来するという説もあります。時代とともに発音が変化し、「quid」と短縮されたのち、ポンドと結びついたとされています。
4. アイルランド経由の移入説
17世紀から18世紀にかけて、アイルランドからイギリス本土へ移住した人々が持ち込んだ言葉が変化して定着したという説もあります。ただし、この説の根拠となる具体的な語彙については諸説あり、確証は得られていません。
まとめ:謎は残るが、今や欠かせない日常表現
「クイド」の正確な起源は定かではありませんが、ラテン語との関連性を指摘する説が最も広く支持されています。いずれの説が正しいにせよ、今日では「quid」は英国ポンドを指す最も一般的な口語表現として完全に定着しています。イギリスへの旅行や滞在を予定している方は、覚えておくと現地の会話がぐっと身近に感じられるでしょう。