ヨーロッパの歴史

イギリス人はいつイギリスに侵入したのか?——「ブリトン人の侵入」は実在しない

「イギリス人はいつイギリスに侵入しましたか?」という問いには、実は明確な答えがありません。なぜなら、歴史上「ブリトン人(Britons)がイギリスに侵入した」という記録は一切存在しないからです。

ブリトン人はイギリスの先住民族

ブリトン人とは、ローマ軍が上陸する以前からグレートブリテン島に定住していたケルト系の先住民を指します。彼らは少なくとも鉄器時代にはすでに島内で生活しており、独自の言語(ブリソン諸語)や文化を築いていました。つまり、ブリトン人にとってイギリスは「侵略の対象」ではなく、代々受け継いできた故郷そのものだったのです。

西暦1世紀——ローマ帝国による侵攻

ブリトン人が初めて外部勢力による大規模な侵攻を受けたのは、西暦43年、皇帝クラウディウス率いるローマ帝国のブリタンニア遠征のときです。これによりイングランドとウェールズの大部分がローマの支配下に入り、約350年間にわたるローマ支配の時代が幕を開けました。

その後も続いた「侵入」の歴史

ローマ軍撤退後の5世紀には、アングル人やサクソン人といったゲルマン系民族(アングロサクソン人)が移住・定着し、9世紀以降はヴァイキング(ノース人)の襲来が相次ぎました。さらに1066年には、ノルマンディー公ウィリアムによるノルマン・コンクエスト(ノルマン征服)が起こっています。こうした一連の出来事こそが、イギリス史における「侵入」と呼びうるものです。

まとめると、「イギリス人がイギリスに侵入した」という事実はなく、ブリトン人はあくまで先住のケルト系住民でした。実際にイギリスへ侵入したのは、ローマ人、アングロサクソン人、ヴァイキング、ノルマン人といった外部の勢力だったのです。