ホロコーストによって命を落とした「ドイツ人」は、犠牲者全体の中ではごくわずかにとどまります。ナチス・ドイツが実行したホロコーストの犠牲者の大多数はユダヤ人であり、そのほかにもロマ(シンティ・ロマ)、同性愛者、政治的反体制派など、さまざまなグループの人々が組織的に迫害・殺害されました。
ホロコーストの犠牲者は誰だったのか
ホロコーストとは、1930年代から1945年にかけて、ナチス・ドイツとその協力者が国家ぐるみで進めた大量虐殺を指します。主な犠牲者グループと推計人数はおおよそ次のとおりです。
- ユダヤ人: 約600万人。ホロコースト犠牲者の圧倒的多数を占めます。
- ロマ(シンティ・ロマ): 推計20万人〜50万人程度が犠牲になりました。
- 障害を持つ人々: 「T4作戦」などの安楽死計画により、20万人以上が殺害されたとされます。
- 政治犯・反体制派: 共産主義者、社会民主主義者、宗教指導者などが強制収容所に送られました。
- 同性愛者: 数千人から1万5千人規模が収容所へ送致されました。
「ドイツ人の犠牲者」をめぐる注意点
厳密に言えば、ドイツ国籍を持つユダヤ人やロマ、障害者、反体制派の人々も数多く犠牲になっています。しかし、彼らが標的となった理由は「ドイツ人だから」ではなく、「ユダヤ人である」「障害がある」「政権に批判的である」といった属性や信念のためでした。つまりナチスは、自国民であっても、その定める「民族共同体」から外れた人々を容赦なく迫害したのです。
このため、ホロコーストを「ドイツ人に対する虐殺」と捉えるのは適切ではありません。ホロコーストとは、ナチス・ドイツという国家が、自国民を含む特定の集団を組織的に抹殺した歴史的な悲劇であり、その犠牲者の大多数はヨーロッパ各地に暮らすユダヤ人だったのです。