ドイツ艦隊の猛攻――旗艦ライオン号炎上
1916年5月31日、北海で勃発したユトランド海戦。ドイツ艦隊が北へ進路を取ると、わずか数分のうちに、ビーティー提督が座乗するイギリス巡洋戦艦HMSライオンが集中砲火を浴びた。炎に包まれたライオン号は隊列を離れ、南へと後退していく。ドイツ側の射撃は極めて正確で、ライオン号が離脱した直後には、フォン・デア・タン号の砲弾がHMSインディファティガブルに次々と命中した。
インディファティガブル号、爆発四散
午後4時3分ごろ、インディファティガブル号は轟音とともに大爆発を起こし、炎と破片の雲へと変わった。煙が晴れたとき、そこに艦の姿はもうなかった。後方にいたタイガーとニュージーランドは、同じ運命をたどることを避けるため南へ針路を変えたが、ほどなくクイーン・メリーおよびドイツ艦隊との接触を失ってしまう。
孤立したクイーン・メリー号の最期
激しい戦闘の混乱の中で、クイーン・メリーは僚艦2隻が南へ転舵したことに気づいていなかった。こうして同艦は単独で戦線にとり残され、ほぼ完全な戦力を保ったまま整然と並ぶドイツ艦隊と対峙することになった。数分後、デアフリンガーの主砲から放たれた3発の砲弾がクイーン・メリーに命中。操縦不能となった同艦はドイツ艦隊の眼前を横切り、やがて大爆発を起こした。時刻は午後4時26分ごろである。
開戦からわずか75分のうちに、ビーティー提督は2隻の巡洋戦艦を失い、旗艦ライオン号は燃えさかる残骸船と化していたのである。
第5戦隊の到着で戦況は一変
まさにこの瞬間、第5戦隊(クイーン・エリザベス級高速戦艦部隊)が戦場へ到着し、19,000ヤード(約17,400メートル)の遠距離からドイツ艦隊への砲撃を開始した。この射程はドイツ艦の主砲には届かない距離であり、ヒッパー艦隊は一時的な後退を余儀なくされた。
しかしヒッパー中将は、自軍にはまだ「奇襲」と「速度」という二つの優位があることを見抜いていた。彼は西側から回り込むように再び攻勢に転じ、すでに消耗していたビーティー艦隊への反撃を開始したのだ。
ジェリコーの決断と増援派遣
クイーン・メリーとインディファティガブルの喪失、さらに旗艦ライオン号が炎に包まれたとの報告を受けたジェリコー提督は、巡洋戦艦インヴィンシブル、インフレキシブル、インドミタブルの3隻に対し、ビーティー戦隊の指揮を引き継いで敵に報復せよと命じた。一方、北東方面へヒッパーの巡洋戦艦隊を追撃していた第5戦隊は、狙っていた敵がすでに南東へ針路を変えていたことに気づかなかった。
炎上するライオン号への最後の追撃
南下するヒッパー艦隊は、炎上しながら漂うライオン号のすぐそばを通り過ぎた。ヒッパーはとどめを刺すべく魚雷攻撃を下令し、水雷艇V-48が攻撃に向かった。だがライオン号はこの危機を奇跡的に免れ、沈むことなく生き延びたのである。