古代の歴史

アヴァロンとは?アーサー王伝説に眠る伝説の島「林檎の園」の神話と謎

アヴァロン――「林檎の園」と呼ばれる伝説の島

アヴァロン(Avalon)は、アーサー王伝説に登場する神話上の島です。その名は古語で「林檎の園(りんごの果樹園)」を意味するとされ、妖精モルガンが女王として君臨する場所として知られています。

ケルト伝承においてアヴァロンは神聖な島であり、女神ケリドゥーウェンの巫女たちが住まうとされてきました。誰もが足を踏み入れられる場所ではなく、ある種のイニシエーション(入門儀礼)を経た者だけがたどり着けるといわれます。島へ向かう船を呼ぶ方法を知っていること、さらには湿地の迷路を抜けて徒歩で到達する術を会得していることが、訪問者の条件とされるのです。

一方、普通の人間の目には、そこは修道院を擁し、隠遁の場となる「修道士の島」として映るといわれます。しかし、この神話の真の意味を読み解くことはより複雑です。「アヴァロン」とはケルト伝統の最後の避難所を象徴しており、それゆえ島はアイルランドに相当するとされることもあれば、伝説が守り続けられる限界の地(terrae finitae)全般を指すとも考えられています。

霧に包まれた聖なる島の姿

神話や文学の伝承によれば、アヴァロンの島は霧に囲まれ、その中心には環状列石クロムレックを頂く山がそびえています。そこは古の宗教の守護者である湖の貴婦人ヴィヴィアン、そして魔術師マーリンの住処でもあったとされます。

アヴァロン島の消失

ケルトの伝説的伝統が薄れていくにつれ、アヴァロンは現世から遠ざかっていったとされます。ガラハッドが聖杯を見出したとき、キリスト教がケルトの信仰に取って代わり、アヴァロンの島は世界の目から姿を消しました。以後、妖精モルガンがアヴァロンの女王となり、エルフや妖精といった幻想的な生き物たちが暮らす場所になったといわれています。

アヴァロン島はどこにあるのか

注目すべきは、ケルト思想において「島」とは必ずしも水に囲まれた土地を意味しないという点です。むしろそれは、外界から隔絶された孤立した場所、あるいは残りの世界から切り離された領域を広く指します。

現在、アヴァロンの所在地は不確かで諸説ありますが、伝承ではイングランド・サマセット州の町グラストンベリー、聖なる丘トー山のふもとに位置づけられています。また、グラストンベリーの修道院跡には、アーサー王とその妃グィネヴィアが葬られているとも伝えられています。

神話学的な解釈――死者の国としてのアヴァロン

ケルト神話の伝統、ひいては印欧語族に共通する神話観に照らせば、アヴァロンの島は一種の死者の国、少なくとも「もうひとつの世界(異界)」として捉えることができます。アーサーの滞在は永続的なものではなく、世界は遅かれ早かれ帰還し介入すべき王の再臨を待ち続けているのです。したがってアヴァロンは、入口が現実世界の既知の場所にあり得るとしても、現実世界に対応する地理的な位置を持つとは限りません。

実際、アーサーは三人の姉妹によって船でこの島へ運ばれます。また、アヴァロンの名に含まれる「林檎」への言及は、島が持つ不死性の次元を想起させます。ただしそこで得られる永遠の命は、あくまで消極的なもの――アーサーの傷は癒えることがないのです。ギリシャ神話の伝統にも並行する要素が見られます。冥界の渡し守カロンの舟、そして世界の果てにある閉ざされた庭園ヘスペリデスの黄金の林檎は、まさにこれに対応するモチーフだといえるでしょう。