1939年のポーランド侵攻は、しばしばドイツ軍による一方的な「軍事行進」として語られる。しかし、それは誤りだ。ポーランド軍が敗北した理由は複数あるが、彼らは最後まで、そしてしばしば英雄的に戦い抜いたのである。
その好例が、1939年9月1日から3日にかけて行われたヨルダヌフの戦いである。この戦いでドイツ第18軍団と対峙したのは、スタニスワフ・マチェク大佐率いるポーランド第10機械化騎兵旅団。通称「黒い旅団」として知られた精鋭部隊だった。
タトラ山脈を越えて迫るドイツ軍
ドイツ第18軍団は、スロバキア国境からポーランドへ侵入する第14軍の一部だった。ドイツ軍はタトラ山脈の峠を越え、クラクフ方面に展開するポーランド軍の陣地を突破しようとしていた。軍団には9月3日までにミスレニツェの町を占領し、周辺のポーランド軍を包囲せよとの命令が下されていた。
この地域に配置されていたポーランド軍は、ヤン・ヴィチク中佐指揮下の国境警備連隊1個のみ。しかし、オーストリア出身のバイエル中将が指揮する第18軍団麾下の第3山岳師団、第2装甲師団、そして第4軽師団(騎兵と装甲部隊を混成したハイブリッド師団)に圧迫され、勇敢に抵抗したものの、ポーランド軍は後退を余儀なくされた。
「黒い旅団」、防衛線の穴を塞ぐ
危機が差し迫る中、ポーランド軍司令部は第10機械化騎兵旅団に対し、ヨルダヌフとラブカ両村周辺で拡大しつつある戦線の突破口を封鎖するよう命じた。旅団は迅速に移動し、国境警備連隊の残存兵力および第12歩兵連隊の1個大隊と合流した。
マチェク大佐は直ちに部隊を戦闘配置につけた。ドヴォラク大佐の第24機械化ウーラン連隊は、ヨルダヌフ南方の丘陵地帯とヴィソカ高地に展開した。ここでドイツ軍との激烈な衝突が繰り広げられた。国境警備隊の部隊で増強された第24連隊は、ドイツ第2装甲師団の前進を見事に食い止めたのである。
しかしドイツ軍は、激しい砲撃準備の後、全戦力をもって攻撃を再開した。それでも疲れを知らぬポーランド兵たちは、損害を受けながらも再びドイツ軍を阻止した。ドイツ軍は撤退し、少なくとも30輌の戦車の焼け残った残骸を戦場に残すこととなった。
4度目の攻撃で高地を奪われるも……
その後もドイツ軍の攻撃は2度失敗に終わった。そして夕暮れ時に行われた4度目の攻撃で、ついにドイツ軍はヴィソカ高地と同名の村を占領することに成功した。それでもドヴォラクの部隊は、装甲列車の援護のもと、秩序立てて後退した。
ドイツ軍は翌日の戦闘再開に備え、村に燃料と弾薬を搬入した。ところが夜になると、ヴィソカ村のポーランド人住民たちが、ドイツ軍の燃料積載車両に放火することに成功したのだ。真夜中、突然、村全体が爆発の光で照らし出された。戦車もろとも炎に包まれる兵士たちを目にしたドイツ軍は、パニックに震えた。
10倍の戦力差を覆した戦果
しかしこの出来事をもって、戦闘は幕を閉じた。ドイツ軍の損害は、少なくとも戦車50輌とその他多数の車両に上った。注目すべきは、ドイツ軍が約5万人、戦車500輌、火砕130門以上を投入したのに対し、ポーランド軍の総兵力はわずか5,000人、軽戦車・装甲車58輌、火砕16門だったということだ。
クラクフ軍司令部は第10機械化騎兵旅団に対し、逐次躍進によって後退するよう命じた。実際、旅団は2回にわたり追撃してくるドイツ軍への待ち伏せ攻撃を成功させ、大きな損害を与えた。さらにポーランド空軍もPZL.23 カラス軽爆撃機によるドイツ戦車集結地への爆撃で大きな戦果を挙げている。
9月4日にも後退機動は続き、ポーランド軍はさらに2回の待ち伏せ攻撃を成功させ、ドイツ軍に人的・物的な甚大な損害を与えた。第10機械化騎兵旅団は9月19日まで戦い続けた。この頃にはソ連軍がすでにポーランド東部へ侵攻していた。旅団は武器を捨てることなく、ハンガリーへ越境したのである。
亡命先での再起――自由ポーランド軍の中核へ
旅団の将兵たちはフランスへ渡り、第10機甲騎兵旅団を編成して、フランス崩壊まで戦い抜いた。その後、脱出に成功した者たちはイギリスへ渡り、そこでポーランド第1機甲師団の中核を形成した。
1939年当時の第10機械化騎兵旅団の編制
1939年当時、第10機械化騎兵旅団は以下の編制を有していた。第10乗馬狙撃兵連隊(自動車化歩兵4個中隊、機関銃中隊1個、37mm対戦車砲3門を擁する対戦車ウーラン部隊1個)、同一組織の第24機械化ウーラン連隊、砲兵中隊1個、軽戦車3個中隊(戦車・装輪装甲車42輌)、37mm対戦車砲18門の対戦車中隊、そして40mm高射砲4門からなる対空砲兵部隊である。
スタニスワフ・マチェクは終戦まで部下たちを指揮し続けた。そして1994年、亡命先のイギリスでこの世を去った。だが少なくとも、祖国がソ連のくびきから解放される瞬間を目にすることはできたのである。
写真ギャラリー
第10機械化騎兵旅団のオートバイ部隊。ドイツ式のヘルメットを着用している。
第10機械化騎兵旅団の軽戦車。
旅団の幕僚と軍旗。
地図を検討するマチェク大佐。
偵察に出る旅団の兵士たち。
部下と語らうマチェク。
旅団の37mmボフォース対戦車砲。
前線へ向かう旅団の一隊。
前線へ向かう旅団の戦車。
旅団の兵士と車両。