メティス人(Métis)は、ヨーロッパ系(主にフランス系・スコットランド系)とカナダのファースト・ネーションの血を引く先住民族です。独自の言語であるミチフ語や、精巧なビーズ細工、ジグ踊りなどに代表される豊かな文化を持ち、独立したひとつの民族としての権利と承認を求める長い闘いの歴史があります。1982年のカナダ憲法では、ファースト・ネーション、イヌイットと並ぶ先住民族として正式に認められています。
「メティス」とひとくちにいっても、その内部は決して均一ではありません。地域ごとに異なる歴史と伝統を持つ、多様なコミュニティ(部族)が存在します。以下に代表的なグループを紹介します。
メティス人の主な部族・コミュニティ
レッドリバー・メティス
カナダで最も古く、最大規模を誇るメティスの集団です。マニトバ州のレッドリバー流域に暮らすフランス系・スコットランド系の毛皮商人とファースト・ネーションの子孫であり、19世紀にルイ・リエルが率いた抵抗運動の中心的存在としてもよく知られています。
パシフィック・ノースウェスト・メティス
ブリティッシュコロンビア州に暮らすメティスの人々です。この地域に定住したフランス系・スコットランド系の毛皮商人と先住民の子孫で、太平洋岸北西部ならではの歴史と文化を育んできました。
ミチフ・メティス
マニトバ州およびサスカチュワン州に広がる集団です。フランス語とクリー語が融合した独特の言語「ミチフ語」を話すことで知られ、毛皮交易時代に形成されたフランス系・スコットランド系商人と先住民の結びつきを今に伝えています。
ヒューロン・メティス
オンタリオ州に暮らすメティスのグループです。この地域に定着したフランス系の入植者・商人とファースト・ネーションの人々の子孫とされ、五大湖周辺の交易ネットワークの中で独自のアイデンティティを築いてきました。
ジェームズベイ・メティス
ケベック州のジェームズ湾沿岸地域にルーツを持つメティスの人々です。フランス系と先住民の混血の子孫であり、北方の狩猟・交易文化の中で独自の生活様式と伝統を発展させてきました。
まとめ
ここで紹介したのはほんの一例にすぎず、カナダ全土にはさらに多くのメティスのコミュニティが点在しています。それぞれが固有の歴史、文化、伝統を受け継ぎながら、メティス民族全体の豊かな文化的遺産を形作っています。近年は自らをメティスと認識する人口も増加傾向にあり、各コミュニティの存在は今後ますます注目されていくでしょう。