古代の歴史

ウェナッチ族の食文化:コロンビア川の恵みと狩猟・採集による伝統的な食生活

ウェナッチ族の食料資源

ウェナッチ族(Wenatchi)は農業を行わなかった民族です。彼らの暮らしを支えていたのは、主にコロンビア川、ウェナチー川、エンティアット川を遡上するサケ類をはじめとする漁業でした。さらに、根菜やベリー類の採集を行い、ヘラジカ(エルク)、シカなどの大型獣から、ウサギやビーバーといった小型動物まで幅広く狩猟していました。

サケとその他の魚

春になるとサケがコロンビア川を遡上してきます。この春のサケの到来は、部族にとってお祝いに値する大イベントでした。サケは網で捕らえたり、銛で突いたり、釣り針で釣ったりして捕獲され、多くは天日干しにされて冬の備蓄用に保存されました。また、秋には二度目のサケの群れが川を遡上します。

ウェナッチ族はサケ以外にも、スチールヘッド(ニジマスの降海型)、マス、カワスズメ類などさまざまな魚を漁獲対象としていました。これらの魚の中には、ソケットサーモン(紅鮭)のように海から川を遡上して産卵するものもあれば、マスのように一年中その川に生息する定着種もいました。

ウェナッチ族は、これらの魚が一年のうち特定の時期に大きな群れを作って移動することを熟知しており、魚が浅瀬に集まる時期を見計らって、網や釣り針を使って大量に捕獲しました。捕れた魚は通常、天日干しにされ、餅状に固めて保存され、年間を通じて食べられたのです。

狩猟と採集

漁をしていないとき、ウェナッチ族の男性たちはシカ、ヘラジカ、ヤギ、クマ、ウサギ、マーモット、山ビーバーなどを狩っていました。また、リスやシマリスのような小動物は、罠や弓矢を使って捕獲しました。

狩猟は、共同で獲物を追い立てる「ドライブ」と呼ばれる方法で行われるのが一般的でした。火を使って動物を驚かせ、柵の中へ、あるいは待ち伏せした狩人たちの方へと追い込むのです。ただし、獲物となる動物は広範な地域に散らばっていることが多いため、狩猟は容易ではなく、成果が上がらないことも少なくありませんでした。

一方、女性たちは多種多様な野生植物を採集していました。草原の土から掘り起こすカマス(カマッシア)やビタールートなどの根菜類、各種のベリー類、木の実や種子、春の新芽、そして薬用植物まで、その範囲は広範でした。真夏にブラックチェリー(ノイチゴグミの一種)やビターチェリーが熟す季節になると、女性や子どもたちは集まりに出かけ、これらの果実を採取して乾燥保存しました。

調理法と食事

こうした食材にはそれぞれ、好まれる伝統的な調理法・食べ方がありました。多くの根菜やベリーは生のまま食べられたり、湯で煮て食べられたり、叩いて餅状に固めて乾燥させ、保存食にされたりしました。

秋に獲れたサケは、骨をつけたまま割いて干し、頭を取り除く程度の簡単な加工だけで貯蔵されることもありました。あるいは魚を煮て、脂を油として抽出し、保存することもありました。

クマ、ビーバー、マーモットなどの獣肉には特別な調理法がありました。それらは水で煮込み、出てきただし汁にさまざまな根菜を加えてスープ仕立てにしたのです。

シカ、ヘラジカ、小動物の肉は、保存のために焼くのが一般的でした。ヘラジカやシカの肉の一部は、乾燥させて燻製にすることで長期保存されました。

一年の大部分の時期において、女性や子どもたちは保存食を使ってスープやシチューを作りました。また、多くの保存食はそのまま乾燥した状態でも食べられ、実際にウェナッチ族が何日も火を使わずに過ごすこともあったといいます。