古代の歴史

農業の発展に不可欠だったもの――新世界(アメリカ大陸)には何が欠けていたのか?

新世界に欠けていた「大型の役畜」

コロンブスがアメリカ大陸に到達する以前の「新世界」には、農業や運輸を支えるうえで極めて重要な要素が一つ欠けていました。それが馬・牛・ロバといった大型の役畜(荷役動物)です。

旧世界では、馬や牛は土地を耕すための犂(すき)を引く力として、また収穫物や物資を長距離運搬する手段として、文明の発展に不可欠な存在でした。しかし、アメリカ大陸にはこうした家畜動物が本来生息していなかったのです。

なぜアメリカ大陸には役畜がいなかったのか?

実は、馬の祖先にあたる動物はかつて北米大陸にも存在していましたが、氷河期の終わり頃に絶滅してしまいました。その結果、先住民の文明であるアステカやインカなどは、人力とリャマ(インカ圏のみ)に頼った農業と運搬を行わざるを得ませんでした。

ヨーロッパ人による持ち込みとその影響

15世紀末以降、ヨーロッパからの入植者たちが船で馬や牛、ロバをアメリカ大陸へ持ち込みました。これにより、新世界の農業生産性は飛躍的に向上し、大規模な開拓やプランテーション経営が可能となりました。一方で、この動物の移動は「コロンブス交換」と呼ばれる新旧世界間の生物・文化の大交流の一部でもありました。

大型の役畜の有無は、大陸ごとの文明の発展の違いを語る上で、非常に示唆的なポイントだと言えるでしょう。