コロニアル・ニュー・ミュージック(CNM)とは
コロニアル・ニュー・ミュージック(Colonial New Music、略称:CNM)とは、17世紀から18世紀にかけて北米大陸のイギリス植民地で育まれた多様な音楽の伝統と実践を指す用語です。この音楽は、イングランド、スコットランド、アイルランド、フランスから渡ったヨーロッパ人入植者がもたらした音楽的伝統を主な基盤としながらも、アフリカ系の人々やネイティブ・アメリカン(先住民族)といった非ヨーロッパ圏の音楽要素を取り込みながら独自の発展を遂げました。
コロニアル・ニュー・ミュージックの8つの特徴
1. ヨーロッパ起源のルーツ
CNMの多くは、当時のヨーロッパで広く親しまれていたイングランドの民俗音楽、詩篇歌(プサルモディ)、教会音楽、舞曲などの様式・ジャンルに由来しています。
2. 宗教音楽の重要性
植民地社会において宗教音楽は大きな役割を果たしました。教会では詩篇歌や賛美歌の歌唱が一般的な礼拝の形式であり、宗教的なテーマは世俗音楽の中にもしばしば反映されました。
3. 豊かな世俗音楽
CNMには、バラッド(物語歌)、愛の歌、酒宴の歌、踊りや娯楽のための器楽曲など、多彩な世俗音楽も含まれていました。
4. 多様な民族による影響
アフリカから連れてこられた奴隷、先住民族、ヨーロッパ人入植者など、多様な民族集団の共存が、植民地における豊かで変化に富んだ音楽文化の形成に大きく貢献しました。
5. 使用された楽器
ニューイングランド植民地ではフィドル、リコーダー、フルート、ハープシコードなどの楽器がよく演奏されていました。一方、南部植民地ではギター、バンジョー、フィドルがより広く普及していました。
6. 記譜された楽譜の少なさ
CNMの大部分は口承によって世代から世代へと伝えられており、この時代の文献記録や楽譜として現存するものは比較的少数にとどまります。
7. 社会的機能
CNMは、社交の場での娯楽の提供、文化的アイデンティティの表現、宗教的礼拝の支えなど、コミュニティにおいてさまざまな社会的機能を担っていました。
8. 地域ごとの違い
植民地の各地域では、それぞれの文化的・地理的背景に応じて、独自の音楽様式や嗜好が発達しました。
コロニアル・ニュー・ミュージックの代表例
ウィリアム・ビリングズ(William Billings、1746〜1800年)
植民地期ニューイングランドを代表する作曲家兼音楽教育者であり、詩篇歌やアンセムの作品で広く知られています。
「ジョージ・ポージー(George Porgie)」
植民地期ニューイングランド発祥の有名なバラッドで、不貞な夫を題材とした物語歌です。
「ヤンキー・ドゥードル(Yankee Doodle)」
アメリカ独立戦争の時代に生まれた人気曲で、イギリス軍とアメリカ軍の双方によって行進曲として用いられました。
「バージニア・リール(Virginia Reel)」
南部植民地発祥の伝統的なダンスの一つで、現在でも踊り継がれている人気のダンスです。
アメリカ音楽史における意義
コロニアル・ニュー・ミュージックは、アメリカ合衆国の音楽遺産を形作るうえで重要な役割を果たし、その後に発展したアメリカのフォークミュージックや各種ポピュラー音楽ジャンルの土壌となりました。ヨーロッパの伝統と新大陸の多様な文化が融合したこの時代の音楽は、今日のアメリカ音楽の原点と言えるでしょう。