古代インダス文明を代表するハラッパ文化は、高度な都市計画や優れた工芸技術で知られていますが、動物の家畜化についても多くの実績を残しています。しかし、すべての動物を飼い慣らしていたわけではありません。
ハラッパ人が家畜化した動物たち
考古学的な発掘調査によれば、インダス川流域に暮らしていた人々は、さまざまな動物を家畜化して生活に取り入れていました。主な家畜・飼育動物は以下の通りです。
- コブウシ(ゼブ牛) — 農耕や荷運びに活用された重要な家畜
- 水牛 — 湿地帯での労働力として重宝された
- ヤギ — 乳や肉、皮などの資源源
- 豚 — 食料として飼育
- ヒツジ — 羊毛や肉の供給源
- イヌ — 見張りや狩りのパートナー
- ネコ — 穀物を守る害獣駆除役
唯一、証拠がない動物——「馬」
これらの豊富な家畜の中で、馬だけは家畜化の確かな証拠が見つかっていません。インダス文明の遺跡からは馬の骨格や明確な飼育の痕跡がほとんど出土しておらず、当時の人々が馬を飼い慣らしていたとは考えられていません。
この事実は興味深い点です。なぜなら、後のインド亜大陸において馬は戦争や移動の中核となる存在になったからです。馬が本格的にこの地域へ広まったのは、インダス文明の衰退後、中央アジアからの移住者やアーリヤ人の到来とともだったとする説が有力です。
まとめ
ハラッパ文化はコブウシ、水牛、ヤギ、豚、ヒツジ、イヌ、ネコなど多様な動物を家畜化した一方で、馬の家畜化については一切の証拠が存在しないというのが現在の考古学上の見解です。この違いは、インダス文明の経済活動やその後の歴史的展開を理解するうえで重要な手がかりとなっています。