中世の厩務員(ステーブルハンド)は、「グルーム」とも呼ばれ、貴族の乗用馬から日常の作業に使われる馬まで、あらゆる馬の世話を入念に行うことで、中世社会の乗馬文化において欠かせない役割を担っていました。
厩務員の主な職務
毛づくろいと衛生管理
厩務員は、ブラシによる定期的な毛づくろいで馬体の汚れや泥、異物を取り除き、馬の清潔を保つ責任がありました。これは馬の見た目を美しく保つだけでなく、皮膚トラブルを防ぐためにも重要な作業でした。
運動と調教
馬を健康に保つため、厩務員は馬の用途に応じた運動メニューを組み立てました。速歩や駆け足の訓練、合図に応じた特定の動作の練習などがその代表例です。
餌やりと栄養管理
馬に栄養価の高い餌を与えることも厩務員の大切な仕事でした。干し草や燕麦(えんばく)、その他の穀物をバランスよく計量して与え、馬の健康と体力を支える栄養をきちんと確保していたのです。
厩舎の清掃
厩務員は常に厩舎を掃除し、馬にとって清潔で快適な住環境を維持していました。糞の除去、藁などの敷料(しきりょう)の補充、乾燥状態を保って病気の蔓延を防ぐことなどが含まれます。
健康管理
正式な獣医師としての訓練は受けていませんでしたが、厩務員には馬の病気や不調の兆候を見抜く眼力が求められました。必要に応じて、医学的な知識を持つことが多かった鍛冶屋(蹄鉄工)や獣医師へ知らせるのも彼らの役目でした。
馬具の準備
騎士が槍試合(ジョスト)に臨む前や、領主が移動のために馬を必要とする際には、鞍や辔(くつわ)、手綱といった適切な馬具を整えて準備しました。さらに、蹄鉄が正しく装着され、良好な状態にあるかの確認も行いました。
旅の同行者
遠征や旅の際には、厩務員が騎士や貴族に同行し、道中の馬の世話をして健康を守り、必要があればすぐにケアを施しました。
騎士や貴族との関係
厩務員は仕える騎士や貴族と深い絆を築くことが多く、馬の扱いに関する卓越した技術によって、屋敷内でも信頼と敬意を集める存在となりました。
まとめ
このように中世の厩務員は、馬の世話、調教、そして時には良き仲間としての役割まで担う、多面的かつ不可欠な存在でした。彼らの献身的な働きは、人と馬という堂々たる動物との調和のとれた関係を育んでいたのです。