18世紀前半の1710年代は、ヨーロッパからアジア、北米に至るまで、世界の国際秩序が大きく塗り替えられた10年間でした。スペイン継承戦争の終結、イギリス・ハノーヴァー朝の誕生、大北方戦争の推移、そして南海会社の台頭など、後の歴史を左右する出来事が相次ぎます。この記事では、1710年から1719年までの主要な出来事を年ごとにわかりやすく解説します。
1710年
- サチェヴェレル事件: イギリスで政治危機が発生し、ホイッグ党政権が崩壊してトーリー党が政権を掌握。これが後のユトレヒト条約締結への道を開くことになります。
- 大北方戦争の継続: スウェーデンとロシアの戦争はポルタヴァの戦いの敗北後も収まらず、戦火が続きました。
- ムガル帝国の衰退: インドのムガル帝国が衰退への道をたどり始めます。
- 清の宣教師規制: 中国の清は、典礼論争を背景にキリスト教宣教師活動への規制を強化しました。
1711年
- カール6世の即位: 神聖ローマ皇帝ヨーゼフ1世の死去を受け、オーストリア大公カールが「カール6世」として即位しました。
- 南海会社の設立: イギリスで南海会社が創設され、後にスペイン領アメリカとの貿易を担う存在となります。
- タスカローラ戦争の勃発: 北米植民地ノースカロライナで先住民族タスカローラ族との戦争が始まりました。
- ロシアの南下: ロシア軍がドナウ公国(ワラキア・モルダヴィア)方面へ進出し、オスマン帝国と衝突しました。
- マラーター勢力の拡大: インドではマラーター勢力が着実に影響力を広げていきます。
1712年
- タスカローラ戦争の終結: 敗れたタスカローラ族は故郷を追われ、移住を余儀なくされました。
- ロシアの遷都: ピョートル1世が首都をモスクワからサンクトペテルブルクへ移し、バルト海指向の国家戦略を本格化させます。
- 和平交渉の開始: スペイン継承戦争の講和に向けた動きが本格化しました。
1713年
- ユトレヒト条約の締結: スペイン継承戦争が事実上終結。イギリスはジブラルタルやミノカ島などの重要な拠点を獲得しました。
- アシエントの移譲: スペイン領アメリカへの奴隷供給権(アシエント)がイギリスに認められ、南海会社に譲渡されます。
- タスカローラ族の再定住: 敗残したタスカローラ族はニューヨーク北部へ移り、新たな生活を始めました。
- 清とジュンガルの対立: 中央アジアでは清とジュンガル・モンゴルの緊張が深まっていきます。
1714年
- ハノーヴァー朝の成立: アン女王が死去し、ハノーヴァー選帝侯ゲオルク・ルートヴィヒが「ジョージ1世」として即位。ここにイギリス・ハノーヴァー朝が始まりました。
- 大北方戦争の継続: ロシアはバルト海地域で優位を固め、領土拡大を進めていきます。
1715年
- ジャコバイト反乱の勃発: ステュアート家の復位を目指す反乱がスコットランドで起こりましたが、翌年に鎮圧されます。
- 南海会社の独占権: 南海会社が奴隷貿易の独占権を獲得し、その地位を盤石なものにしていきます。
- マラーター勢力の伸長: インドのマラーター勢力がさらに版図を広げました。
1716年
- オーストリア・オスマン戦争の勃発: 両帝国の間で戦争が始まり、オーストリア軍はペーターヴァールデインの戦いで決定的な勝利を収めます。
- 東欧の緊張: ロシアとポーランドの関係が緊張を高めました。
- 清のジュンガル対策: 清は中央アジア方面での軍事行動を続けます。
1717年
- スペインのサルデーニャ占領: スペインが地中海のサルデーニャ島を占領し、列強との対立の火種となります。
- ロシアのバルト支配: ロシアはリヴォニアやクールラントを実効支配下に置きました。
- ベオグラードの攻防: オーストリア軍がオスマン帝国領ベオグラードを包囲・攻略します。
1718年
- パッサロヴィッツ条約: オーストリア・オスマン戦争が終結し、オーストリアはベオグラードを含むバルカン地方の領土を獲得しました。
- ストックホルム条約: スウェーデンがハノーヴァーやプロイセンとの戦争に終止符を打ち、大北方戦争は最終局面を迎えます。
- 四国同盟の結成: イギリス・フランス・オーストリア・オランダが四国同盟を組み、スペインの膨張に対抗しました。
1719年
- 南海会社への規制: スペイン政府が南海会社の権限を制限する法令を発布し、同社の事業環境は厳しさを増します。
- 投機の過熱: 南海会社の株価投機が異常な熱を帯び、翌1720年の「南海泡沫事件」という金融恐慌への伏線となります。
- 大北方戦争の帰趨: 戦争は最終段階に入り、ヨーロッパ東部の勢力図はロシア優位へと大きく傾いていきました。
まとめ:秩序が再編された10年
1710年代は、長引いた戦争が講和によって一段落し、新たな国際秩序が形づくられた時代です。ユトレヒト条約による勢力均衡の構築、ハノーヴァー朝によるイギリス政治の転換、ロシアの大国化、そして南海会社に象徴される商業資本の躍進——これらの動きは、18世紀以降の世界史の方向性を決定づける重要な足がかりとなりました。