ローマ兵士は本当にスカートを履いていたのか?
古代ローマの兵士が描かれた彫刻や絵画を見ると、膝丈の「スカート」のような衣装を身につけているように見えることがあります。しかし、厳密に言えば、ローマ兵士がスカートを履いていたわけではありません。彼らが着ていたのは、トゥニカ(tunica)と呼ばれる膝丈のチュニック状の衣服です。
現代の視点ではスカートに見えますが、当時の男性にとってトゥニカはごく一般的な服であり、地中海の温暖な気候に適した、動きやすい実用的な衣装でした。
下着としてのスブリガクルム
トゥニカの下には、スブリガクルム(subligaculum)と呼ばれる下着が着用されていました。これは腰布やふんどしに似た形状で、現代でいう下着の役割を果たすものでした。行軍や戦闘など激しい動きをする兵士にとって、肌と外衣の間にこのような下着があることは、擦れを防ぎ快適さを保つために重要でした。
上に羽織るサグム(軍用マント)
寒い日や悪天候の際には、サグム(sagum)と呼ばれる羊毛製のマントを肩から羽織ることがありました。サグムはローマ軍団兵を象徴する軍用外套であり、防寒だけでなく、雨風しのぎや寝具としても活用される、まさに多用途な装備品でした。
なぜ短い丈だったのか?その実用的な理由
では、なぜローマ兵士の服は膝丈だったのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
1. 動きやすさ: 長いズボンや裾の長い服は、長距離の行軍や剣術・投槍などの戦闘動作の妨げになります。膝丈のトゥニカなら脚を自由に動かせました。
2. 気候への適応: 地中海性気候の夏は非常に暑く、通気性の良い短い衣装の方が涼しく過ごせました。
3. 衛生面: 短い衣装は洗濯や乾燥が容易で、不衛生になりにくいという利点がありました。
ちなみに、北方の寒冷な地域に駐屯する兵士の中には、保温のためにブラッカエ(braccae)と呼ばれるズボンを穿く者もいました。このことからも、ローマ軍の服装が実用性を最優先していたことがわかります。
まとめ
ローマ兵士が「スカート」を履いていたように見えるのは、彼らが膝丈のトゥニカを着用していたためです。スブリガクルムという下着を基礎に、必要に応じてサグムのマントを羽織るという装いは、気候と戦闘という過酷な条件に対応した、理にかなった軍装だったのです。