「受難劇(パッションプレイ)」という言葉を聞くと、古代エジプトに起源があると思われがちですが、実際にはそうではありません。受難劇は、イエス・キリストの受難、死、そして復活を描く宗教劇であり、その起源は中世ヨーロッパにあります。
受難劇とは何か
受難劇とは、キリスト教の聖週間(復活祭前の一週間)に関連して上演される宗教劇で、イエス・キリストが十字架にかけられるまでの苦しみ、死、そして復活を再現するものです。「受難」という言葉自体が、キリストの苦難を指す言葉として長く使われてきました。
中世ヨーロッパにおける誕生
受難劇のルーツは、10世紀から13世紀頃の中世ヨーロッパにさかのぼります。当初は教会内で行われる典礼劇として始まりましたが、やがて教会の外へと場を移し、一般の人々にも理解しやすいよう母国語で上演されるようになりました。
なかでも有名なのが、ドイツのオーバーアマガウ村で1634年から続く「オーバーアマガウ受難劇」です。村の住民によって10年ごとに上演され、現在も世界各地から多くの観客を集める伝統行事となっています。
古代エジプトの宗教劇との違い
古代エジプトには、オシリス神の死と復活を描いた儀礼的な演劇(アビドスの神秘劇など)が存在したと考えられています。しかし、これらはキリスト教の「受難劇」とは別のものであり、その直接の起源ではありません。
このように、受難劇は古代エジプトではなく、中世ヨーロッパの宗教文化の中で生まれた独自の演劇形式なのです。