トマスは、中世を知的・文化的に大きな達成を遂げた時代であると考えていました。彼は特に、トマス・アクィナスやドゥンス・スコトゥスといった中世の哲学者たちの業績に深い感銘を受けていました。
知的・文化的達成の時代
13世紀のトマス・アクィナスは、アリストテレスの哲学とキリスト教神学を統合し、『神学大全』などの著作を通じてスコラ学の頂点を築きました。また、ドゥンス・スコトゥスは緻密な論証で知られ、後世の哲学に大きな影響を与えました。トマスは、こうした思想家たちの存在こそが、中世が単なる停滞期ではなく、豊かな思索の土壌を持つ時代であったことの証だと捉えていました。
社会・経済の進歩
さらにトマスは、中世が社会面・経済面でも大きな進歩を遂げた時代だったと信じていました。都市や町の興隆、商業と交易の拡大、識字能力の普及などは、その進歩を示す具体的な証拠であると指摘しています。
実際、11世紀以降のヨーロッパでは、農業生産の増加を背景に市場やギルドが発展し、商人階級が台頭しました。また、大学の設立や写本文化の広がりによって、読み書きのできる人々が着実に増えていったことも、この時代の活力を物語っています。
西洋文明の発展における重要性
トマスにとって、中世は西洋文明の発展において極めて重要な時代でした。彼はこの時代を、ルネサンス、宗教改革、そして啓蒙思想へと続く基盤が築かれた時期として位置づけていました。中世に培われた学問の伝統、都市文化、制度的な枠組みが、後の近代ヨーロッパにおける思想的・社会的変革を可能にしたのです。
このようにトマスの中世観は、しばしば「暗黒時代」と呼ばれてきた時代を見直し、その実り多い遺産を再評価する視点だといえるでしょう。