ジェフリー・チョーサー(Geoffrey Chaucer、1343年頃~1400年)は、「イギリス文学の父」と称される中世イングランド最大の詩人です。代表作『カンタベリー物語』で知られる彼は、ロンドンのウェストミンスター寺院に埋葬されました。より正確に言えば、同寺院の南翼廊(サウス・トランスセプト)、後に「詩人の角(Poets' Corner)」として知られるようになる場所に眠っています。
チョーサーがウェストミンスター寺院に葬られた理由
チョーサーがウェストミンスター寺院に埋葬されたのは、詩人としての名声ゆえではありません。晩年、彼は「王の仕事係(Clerk of the King's Works)」という要職に就いており、寺院の敷地内にある家屋を賃借して暮らしていました。1400年10月25日に亡くなった際、住まいがすぐ近くにあったことから、寺院の敷地内に葬られたのです。
「詩人の角」の誕生
興味深いことに、チョーサーが埋葬された当時、その場所は詩人たちのための特別な霊廟ではありませんでした。1599年に詩人エドマンド・スペンサーがチョーサーの墓の近くに葬られて以降、この一角には次々と文学者が埋葬され、あるいは記念碑が設けられるようになりました。こうして南翼廊は「詩人の角」と呼ばれるようになり、シェイクスピアの記念碑をはじめ、ディケンズやブラウニングなど、イギリスを代表する文豪たちが眠る場所へと発展していきました。
まとめ
つまり、チョーサーは確かにウェストミンスター寺院に埋葬されています。正確には、その内部にある「詩人の角」と呼ばれる区域です。偶然の事情によって葬られた彼の墓が、やがてイギリス文学の聖地となる伝統の起点となったのは、歴史の皮肉とも言えるでしょう。