ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の主人公オデュッセウスは、腕力よりも狡知と戦略的思考で名を馳せた英雄です。しかし「彼は物語の中で何人の人間を殺したのか」という問いには、実は明確な答えがあります。物語のクライマックスである求婚者たちの虐殺の場面では、オデュッセウス自身が大規模な殺戮の中心に立つのです。
『オデュッセイア』の物語構造とオデュッセウスの人物像
『オデュッセイア』は、トロイア戦争終結後、故郷イタケーへ戻るまでの10年間の航海を描いた叙事詩です。一つ目巨人ポリュペーモス、魔女キルケー、海の怪物スキュラとカリュブディスなど、幾多の試練に直面しながらも、オデュッセウスは力任せではなく知恵と機転を武器に生き延びてきました。旅路そのものは知謀の物語であり、彼は無差別な殺戮を繰り返すようなキャラクターではありません。
クライマックス:求婚者たちの虐殺(第22歌)
ところが物語の終盤、状況は一変します。20年ぶりに帰還したオデュッセウスは、妻ペネロペに言い寄り、家の財産を食い潰していた求婚者たちを、自らの強弓で次々と射抜いていくのです。
殺された求婚者の数
求婚者の総数は108人とされ、その内訳は以下の通りです。
・ドゥリキオン出身:52人
・サメー出身:24人
・ザキュントス出身:20人
・イタケー出身:12人
このうち実際に命を落としたのはほぼ全員で、命拾いしたのは吟遊詩人フェーミオスと伝令メドンの二人だけでした。真っ先に射抜かれたのは傲慢な盟主アンティノオス、続いて交渉を試みたエウリュマコス、そして助命を嘆願した占い師レオデスまでもがオデュッセウスの手にかかっています。
オデュッセウス単独の仕業ではない
重要なのは、この虐殺がオデュッセウス一人の力によるものではないという点です。息子テレマコス、豚飼いエウマイオス、牛飼いフィロイティオスが加勢し、さらに女神アテナーの加護もあったことで、わずかな人数で百人を超える敵を打ち破ることに成功しました。
その他の犠牲者
求婚者以外にも、裏切りの罪を問われた山羊飼いメランテウスや、不義を働いた12人の侍女たち(テレマコスにより処刑)が命を落としています。この一日だけで、100人を超える人々が死んだことになります。
まとめ:オデュッセウスが殺した男の数
『オデュッセイア』を通して見れば、オデュッセウスは知恵の英雄として描かれる一方、物語の結末では求婚者108人(生存者はわずか2人)を討ち取り、間接的な関与を含めれば100人以上の命を奪っています。「何人の男を殺したのか」という問いへの最も有力な答えは、約108人(求婚者)だといえるでしょう。