黒死病を引き起こした疫病とは
14世紀にヨーロッパを襲った「黒死病」の正体は、ペストという感染症でした。原因はペスト菌(Yersinia pestis)で、ネズミに寄生するノミを介して人々の間に爆発的に広がりました。実は黒死病には主に3つの型があり、感染経路や症状、致死率がそれぞれ大きく異なります。
1. 腺ペスト(せんペスト)― 最も一般的な型
黒死病で最も多かったのが腺ペストです。ペスト菌を持ったノミがネズミから人間を吸血することで感染しました。
- 主な症状:高熱、悪寒、そして首・脇の下・鼠径部などのリンパ節が腫れる「横痃(よこぶみ)」と呼ばれるしこりの形成。
- 致死率:有効な治療法が存在しなかった時代には、最大50%に達しました。
2. 肺ペスト ― より少ないが、より致命的な型
肺ペストは腺ペストよりも発生数は少なかったものの、はるかに危険な型でした。原因は同じペスト菌ですが、ノミを介さず、飛沫感染(空気)によって人から人へ直接広がりました。
- 主な症状:高熱、悪寒、激しい咳、呼吸困難。
- 致死率:最大90%と極めて高い死亡率を記録しました。
3. 敗血症型ペスト ― 最も稀で、最も致死的な型
最も発生件数は少ないものの、最も恐ろしかったのが敗血症型ペストです。ペスト菌が血液中で急速に増殖し、全身へと広がりました。
- 主な症状:高熱、悪寒、急激な全身状態の悪化。皮膚の壊死や内出血も見られました。
- 致死率:発症から24時間以内に死亡することが多く、ほぼ確実に致命的でした。
まとめ
黒死病の正体はペスト菌による感染症であり、感染経路の違いによって腺ペスト」「肺ペスト」「敗血症型ペスト」の3つの型に分けられます。特に肺ペストと敗血症型ペストは致死率が非常に高く、中世の人々に計り知れない恐怖をもたらしました。現代では抗生物質による治療が可能になっていますが、早期発見と迅速な治療が生命を左右する点は、今も変わっていません。