
ヨーロッパに先住していたネアンデルタール人
ホモ・サピエンスがヨーロッパに到達した頃には、ネアンデルタール人はすでにこの大陸を生活の拠点としており、後になってサピエンスの特徴とされる行動様式や習慣を、いち早く取り入れていました。
リソワール(lissoir)——5万年前の革加工道具
そんなネアンデルタール人の代表的な発明が、「リソワール(lissoir)」と呼ばれる道具です。これはヨーロッパで発見された最古級の道具の一つで、しなやかなシカの肋骨を材料として作られました。獣皮を加工し、柔らかくて丈夫な革に仕上げるために用いられたもので、(もちろん改良は施されていますが)なんと今日でも製革所で実際に使われているのです。
リソワールは、素材そのものが持つ特性と、その用途や応用の可能性を見事に結びつけた、専門性が高く極めて洗練された工芸品といえます。ネアンデルタール人がこのような道具を自ら開発できる知的能力を持っていたことの証左でもあります。
発見が示す両種の文化的交流

このタイプの道具はフランス南西部で発見され、約5万年前のものだとされています。この遺物を特定した考古学者マリー・ソレッシ氏は、今回の発見について、ホモ・サピエンスの数々の創造物や習慣が、実はネアンデルタール人がすでに実践していたことの再現だった可能性を裏付けるものであり、両種の間の交流がきわめて密接だったことを強調すると結論づけています。
研究者は次のように述べています。
「これは、ネアンデルタール人から私たちの直系の祖先へと文化が伝えられたことを示す、最初の明白な証拠です。……そしてそれは、ネアンデルタール時代から現代まで、私たちの社会が今も使い続けている、おそらく唯一ともいえる遺産なのです。」