考古学的発見

ワット・テプティダラム・ウォラウィハンのプラ・ウボソット(本堂)

ワット・テプティダラム・ウォラウィハンの本堂(プラ・ウボソット)とは

ワット・テプティダラム・ウォラウィハン(Wat Thepthidaram Worawihan)のプラ・ウボソット(本堂)は、寺院の中核をなす最も重要な建物です。現在まで絶えず修復が重ねられてきたことで良好な保存状態を保っており、今なお礼拝の場として活用されています。

立地と環境

標高は海抜約2メートル。チャオプラヤー川、クローン・ロップクルン(旧市街を巡る運河)、そしてワット・ラーチャナーダー付近を流れる運河といった水路に近い土地に位置しています。地質学的には、完新世に形成された水成堆積層からなる地域です。

歴史的背景

このウボソットは、ラッタナコーシン朝(バンコク王朝)第3代ラーマ3世の治世に建立されたもので、時代区分では歴史時代の初期ラッタナコーシン期に属する宗教遺跡に分類されます。

建築様式の特徴

ウボソットは間口13.20メートル、奥行き27.20メートル、高さ16メートルにおよぶレンガ・漆喰造りの建築物です。基壇は本堂基壇と建物基壇の二重構造をなし、両層とも獅子を象った台座がめぐらされ、本堂の前面と背面に左右それぞれ2基、計4つの階段が設けられています。

屋根は二層三連の構成で、下部の連なりは丸みのある曲線を描きます。周囲の廻廊を支えるため、本堂のまわりには角柱が立て並べられ、廻廊の手すりはレンガと漆喰でさほど高くない壁として造られ、その上部は厚みのある平らな面となっています。両側に蓮の花をあしらった意匠がほどこされ、開放的な空間から堂内へと導く部分は、中国産の緑色透かしタイルで覆われています。

屋根瓦はタイ様式で葺かれ、破風(ゲーブル)にはプアン・ウバ文様や花文様といったタイの伝統模様に、山水画、山、樹木、花、鳥などの中国趣味のモチーフが融合した漆喰細工が施され、中国磁器のタイルや鏡板で彩られています。全体を通じて花々の意匠がふんだんに用いられています。

出入口と窓の装飾

本堂の正面と背面にはそれぞれ2か所、計4つのアーチ型出入口があります。アーチは壁面に漆喰で造形され、金箔を施した花と葉の文様で覆われ、その頂部は花瓶に花を挿したような優美な形状です。

窓のアーチは10か所あり、各側面に5つずつ配されています。窓枠の周囲には、出入口のアーチと共通した植物文様の漆喰彫刻がめぐらされています。

扉は内側へ開く木製羽目板扉で、外扉と内扉に分かれます。外扉には金箔押しの漆塗り文様がほどこされ、城郭の上に座すシーター姫を描いた絵が配され、その下部にはラーマーヤナ物語を題材にしたタイ風カノック文様が描かれています。これらは後年に新たに描き直されたもので、内側にも彩色が施されています。窓の羽目板にも扉と同じ趣向の装飾が見られます。

堂内の見どころ

堂内の天井には花輪文様の星形意匠が描かれ、壁面にはラーマ3世時代の美術様式によるカオビン(唐草)文様や、花と蔓草の彩画がほどこされています。

本尊「ルアンポー・カオ」

堂内には本尊として、白色石(シラーウォーン)を彫って造られた降魔成道の仏像が祀られています。幅15インチ、高さ19インチ、厚さ8インチ、肩回り9インチ、胸囲18インチで、「ルアンポー・カオ」と親しまれています。丸顔で伏し目がちな穏やかな表情をもち、底部の湾曲したストゥーパ形の髻、着脱可能な火焔状の光背、袈裟をまとった姿が特徴です。左手は膝上に置き、右手は降魔の印を結び、仰向けの蓮弁の上に結跏趺坐しています。制作年代や正確な由緒は不明ですが、ナンクラオ王(ラーマ3世)が王宮のウィジャヤン・ブサボーク(下段御座)から恭しく迎えさせたものと伝えられます。1971年にはプーミポン国王(ラーマ9世)により「プラ・ブッダ・テーワウィラス」と命名されました。

ウィジャヤン・ブサボーク(玉座)

本尊を安置するウィジャヤン・ブサボークは、セメントと木彫りによって造られた祭壇で、経典に描かれるサッカー神(帝釈天・インドラ)の御座を模して再現されたものです。精緻で美しい佇まいをもち、ラッタナコーシン期の卓越した職人技を今に伝える工芸品といえます。周囲にはテープパノム(合掌する天人)やガルーダの文様が飾られ、金メッキを施した錫で鋳造され、波形ガラスの装飾がほどこされた極めて精巧な作品です。側面には五段の階段状意匠が設けられており、これは当寺の庇護者であったクロムムーン・アプサラスダーテープ(ウィラース王女)の位階を表すものと考えられています。この五段のウィジャヤン・ブサボークは同寺のアイデンティティとされ、寺院およびワット・テプティダラム財団のシンボルとしても用いられています。

脇仏と肖像画

本尊の前方には、初期ラッタナコーシン期美術様式の仏像二体が祀られています。真鍮製の仏立像で、五段の透かし彫り金色台座の上に立ち、「パーン・ハーム・サムット」(海を静める姿)を表します。楕円形の顔に伏し目、通った鼻筋、ほほえむような口元が特徴で、頭部には王者の宝冠(カッティヤフシタポーン)をいただき、頭飾りや胸飾り、首飾りを身につけ、サンワンの護符を下げ、衣には鳥の尾を思わせる文様が施されています。本尊の左右に祀られる五段の透かし彫り台座は、ウィラース王女のシンボルであると伝えられます。

さらに本尊の前方には、白色石製と青銅製の降魔成道仏が一体ずつ安置されていますが、これらは後代に祀られたものと考えられます。というのも、スントーン・プーの著作『ラムパーン・ピラープ』には、左右に海を制する立像があったことのみが記されているためです(宗教庁 1983年:242ページ)。堂内の左側にはタイ芸術局が描いたクロムムーン・アプサラスダーテープ(ウィラース王女)の肖像画が、右側にはラーマ9世の肖像が掲げられています。

境内のその他のみどころ

ウボソットの周囲には、8基の境界石(バイセーマ)を納めるアーチ型の囲いが四方を取り巻いています。囲いはレンガと漆喰で造られ、高い方形の基壇の上に建ち、蓮座と連珠の装飾がほどこされています。四隅には上下に蓮珠を配した擬似柱が立てられ、方形の漆喰屋根を支えています。屋根は中央へ向かって緩やかな曲線を描いて傾斜し、ピラミッド型ないし天蓋(キャノピー)型の特徴的な形態を呈します。頂部には四方向に透かし彫りを施した小さな方形の欄間があり、アーチ状の開口には縁取られた框が設けられ、その上方には花と葉を描いた漆喰装飾がめぐらされています。囲いの内部には、緑色の石を彫って造られた境界石が一体ずつ安置されています。

また、境内にはチャトゥラーティット(四方仏)の仏塔が巡らされています(詳しくは「ワット・テプティダラム・ウォラウィハンのプラ・プラン」の項を参照)。そのほか石彫刻や船の錨石(バラスト)も見られ、人物像と動物像の双方があります。多くは中国人や動物を象ったものですが、ナンクラオ王の御意向により造られたタイ人女性の彫刻もあります。これらの女性像はさまざまな仕草を表現しており、子どもを抱く母親の姿や宮廷に仕える女性の姿などが見て取れます。各彫像には職人が心を砕き、一つひとつに物語を語らせるような構図と細部が凝らされており、初期ラッタナコーシン期の人々の暮らしぶりを生き生きと今に伝えています。