考古学的発見

手書き洞窟遺跡1|先史時代の手形岩画が残るタイの岩陰遺跡

遺跡の立地と地形

手書き洞窟1は、タイ北東部を南北に連なるプーパンカム山脈の砂岩崖に開かれた岩陰遺跡です。この山脈はウボンラタナダム(通称ラームナームチュエン)の東側縁辺に位置します。地質はプークラドゥーン層からプラウィハーン層へと連続する砂岩からなり、西側の山麓は山地由来の堆積物が厚く堆積した地域です。現在この一帯は農業地帯として利用されており、遺跡から約450メートル離れたところに道路とウボンラタナダムが広がっています。

丘の上は落葉樹林に覆われ、大小の砂岩塊が各所に点在しています。土壌は砂質壌土で、丘の頂へと続く道が伸びています。

彩色壁画の所在環境

壁画の舞台となるのは、西向きの崖面です。崖は南北方向に連なり、丘の裾からの高さは約50メートルあります。崖の下部から中部にかけて先史時代の彩色壁画が分布し、地表からの高さ60センチメートル~2メートル、総面積約14平方メートルの範囲にわたります。見学者のために地面は平坦化され、一部は滑らかなセメント床で仕上げられています。また、崖の南側前面には現代の仏像が1体安置されています。

基本情報

  • 標高:平均海面上225メートル
  • 河川:インビテーション川
  • 地形:洞窟・岩陰、山地
  • 地質:プークラドゥーン層からプラウィハーン層へ連続する砂岩
  • 時代:先史時代(後期)、約4000年~3000年前(パヤオ・ケムナック 1989:273)
  • 遺跡種別:彩色岩画(洞窟絵画)遺跡

壁画の内容と表現技法

壁画はすべて赤色顔料で描かれています。人物の手形表現には2つの手法が用いられており、まず吹き付けによるネガティブ型(ステンシル)の左手手形が1点、次に直接手を押しつけたポジティブ型(押印)の手形が2点(1点は左手、もう1点は判別不能)確認されています。

手形以外にも多彩な記号文様が描かれています。平行線、屈曲線、三角形文様、V字・Y字形の横平行条、ジグザグ文様、円形、四角形、塗りつぶしの三角形、鋸歯状文様、矢尻形、蝶形などがそれです。さらに、平行条に三角形や楕円を組み合わせた文様、内部に複数の三角形を含む半円形の条、底辺が開いた方形の中に縦および斜めの平行条を配した文様なども見られ、さまざまな線を組み合わせて新しい図像を生み出しています(芸術省 1989;東北考古学プロジェクト 1985;パヤオ・ケムナック 1996)。

以上のことから、本遺跡の表現技法は「吹き付け」「押印」「描画」の3種類であることがわかります。使用された赤色顔料は、多くの研究者により赤鉄鉱(ヘマタイト)由来と推定されています。

壁画を描いた人々

パヤオ・ケムナック(1989:273)は、壁画の場所が狭い崖面で危険に近く、恒久的な居住には適さなかったと指摘しています。このため、壁画の作者は平野部に暮らす人々、すなわち農耕社会の共同体に属する集団であり、その活動時期は約4000年~3000年前と考えられています。

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