考古学的発見

ワット・プラ・ボーロンマタート|ターク県の丘の上に佇む仏教聖地の歴史とみどころ

ワット・プラ・ボーロンマタート(วัดพระบรมธาตุ)は、タイ北部ターク県ムアン郡にある仏教寺院です。ピン川を見下ろす高台の丘の上に建ち、ランナー様式の美しい仏舎利塔や、願いがすぐ叶うと伝わる「ルアンプー・タンジャイ」仏で知られる、ターク県を代表する名刹です。

立地と地形

同寺はタノン・トンチャイ山脈の東側、ピン川沿いの氾濫原に広がる地域に位置しています。境内は東へ向かってピン川へと緩やかに傾斜しており、寺院のある場所は周囲より一段高い丘のようになっています。ピン川は寺院の東約800メートルの地点を流れています。

標高

海抜約140メートル。

水系

ピン川。

地質条件

この地域は大部分が火成岩で構成されており、中でも花崗岩が最も多く分布しています。花崗岩は三畳紀および石炭紀に形成された岩石です。地形面では、河岸に沿った狭い平野からなる氾濫原(フラッドプレイン)が特徴で、一部の小川沿いには比較的新しい沖積層や堆積物が見られます。

歴史的背景と伝説

考古学的には歴史時代に属する宗教遺跡で、スコータイ時代、アユタヤ時代を経て、ラッタナコーシン(バンコク)時代から現代に至るまで信仰の中心であり続けてきました。

北方語の伝承に残る創建譚

寺内に伝わる北方語(ランナー文字)で書かれた伝承書によると、釈尊が弟子アーナンダを伴ってピン川沿いを旅された際、ターク市内のドイ・マヒヤカ(ドイ・マヒヤン)に立ち寄り、「ここは静寂に満ちた霊地である」と語られたとされます。仏滅後、アーナンダ尊者(一説には過去四仏の弟子とも)が仏舎利、あるいは髪舍利4本をこのドイ・マヒヤンに奉納し、四角形の仏塔を建立して人間と神々の礼拝の場としたのが始まりと伝えられています。別の伝承では、村人たちが仏舎利を納めた穴を覆うために協力して仏塔を築いたともいわれています。

スコータイ時代に遡る可能性

一方、歴史的・考古学的な証拠からは、一部の研究者がこの寺院の起源を仏暦18世紀頃、すなわちスコータイ時代にまで遡らせる見解を示しています。寺院の北西、ドイ・チャンの上にはユッタハッティーチェーディーが位置しており、これはスコータイ王朝初代王ポークン・シインタラートとチョード国主クン・サムチョンの象合戦を記念して建てられたものです。近隣にスコータイ期の遺構が存在することが、その根拠とされています。

近代の復興と王室寺院への昇格

かつては放棄された寺院でしたが、1897年頃に大規模な改修が行われました。さらに1949年2月8日には王室からウィスンカーマシーマー(正式な戒壇の設置を許可する勅許)を授かり、現在はマハーニカーヤ派に属する王室寺院として栄えています。

境内のみどころ

仏舎利塔(プラ・タート)

ヤンゴンのシュエダゴン・パゴダを模したものと伝えられる仏舎利塔です。元となるチェーディーは、1932年から1969年まで長く同寺住職を務めたプラクルー・ピタック・ボーロンタート(ルアンプー・トーンユー)によって建立されたと考えられています。現在の姿はランナー美術様式の八角形のチェーディーで、外壁は真鍮(銅と亜鉛の合金)で覆われ、周囲には16基の小さな仏塔と、12体の仏像を安置するためのアーチ型の祠がめぐらされています。

本堂(ウボーソット)

レンガと漆喰造りの建物で、幅12メートル、奥行き20メートル。1951年の建立です。扉には美しい木彫りが施され、破風や窓にも木彫りの装飾がほどこされています。特に窓の彫刻には釈尊の生涯が描かれ、金箔で華やかに彩られています。階段の袂にはナーガ(龍神)の彫像が配されています。堂内には「ルアンプー・タンジャイ」と呼ばれる仏像が安置されています。これは煉瓦とセメントで造られた降魔成道像で、漆塗りの上に金箔が施されています。「一日で造り上げられた」という逸話が伝わり、ターク市の守護的な聖なる存在として篤く信仰されています。祈願するとたちまち願いが叶うことから、「タンジャイ(すぐに叶う)」という名で呼ばれるようになったといわれます。

礼堂(ウィハーン)

古くからの聖堂で、二層分の高い天井と四方に設けられた通気口が特徴です。この構造により堂内には常に涼しい空気が流れ込むようになっています。内部には金箔を施した漆喰製の仏像が安置されています。また、境内には美しい彫刻が施された古い木造のウィハーンがもう一棟残されており、往時の工芸技術を今に伝えています。

拝殿と祈祷堂

幅8.5メートル、奥行き16メートルの拝殿は1924年に建立されました。さらに1980年には、幅6.5メートル、奥行き12メートルの祈祷堂が新たに建てられています。

僧房

僧侶の居住区画には、木造の建物とコンクリート造りの建物の両方が併設されています。

まとめ

ワット・プラ・ボーロンマタートは、釈尊の足跡にまつわる伝説とスコータイ時代に通じる深い歴史を背景に持ちながら、ランナー様式の荘厳な仏舎利塔が今も参拝者を迎える寺院です。ターク市のシンボルともいうべきルアンプー・タンジャイ仏への祈願を目当てに、県内外から多くの人々が訪れます。ピン川の流れとともに静かに佇むこの聖地は、タイ北部ならではの信仰文化に触れることができる貴重なスポットといえるでしょう。

※本記事は、パウィニー・ラッタナセーリースック氏による調査記録をもとに編集しています。