考古学的発見

ピレネーの岩陰に眠る先史時代の至宝――マルスーラス装飾洞窟の全貌に迫る

フランスの先史学者カロル・フリッツ(Carole Fritz)氏は、オート=ガロンヌ県に位置する装飾洞窟「マルスーラス」で進められている調査について語ります。この洞窟は19世紀末、ラスコー洞窟の傑作群が発見されるほぼ半世紀前に見つかったものであり、今回の取材を通じて、彼女の研究にまつわる秘密の一端も明らかになりました。

ピレネーの岩陰に眠る先史時代の至宝――マルスーラス装飾洞窟の全貌に迫る

マルスーラス遺跡(オート=ガロンヌ県)に刻まれたオーロックス(原牛)の頭部彫刻の3D復元画像。

ピレネーの山あいに隠された先史時代の聖域

中央ピレネーの山あい、オート=ガロンヌ県とアリエージュ県の県境に近いマルスーラス集落のほど近くには、木々のアーチに守られた石灰岩の岩塊がそびえ、その奥に先史時代の装飾洞窟への入り口がひっそりと隠れています。

この洞窟は一般にはあまり知られていませんが、フランスとスペインに共通する先史文化である「フランコ=カンタブリア美術」において最も重要な洞窟の一つに数えられます。内部には、約1万6000年前の後期旧石器時代マドレーヌ期に制作されたとされる、数百点に及ぶ絵画と精緻な線刻画が残されています。そのモチーフは野牛、馬、アイベックス(野生山羊)、幾何学模様など実に多彩です。

これらの壁面作品群は、トゥールーズ=ル=ミライユ大学TRACES-UMR 5608研究所に所属する先史学者カロル・フリッツ氏とジル・トゼロ(Gilles Tosello)氏により、数年にわたって3D計測技術を駆使した調査が続けられてきました。

「500体の図像」を守るための挑戦

2017年、科学誌『サイエンス・エ・アヴニール(Sciences et Avenir)』誌は両研究者のもとを訪れ、1897年にピレネー地方でフランス初めて発見されたこの洞窟をともに探索しました。フリッツ氏とトゼロ氏が挑むのは、方解石の堆積や来訪者の往来によって長年脅かされ、残念ながら落書きを残す訪問者もいた、きわめて脆弱な装飾のすべてを網羅的に記録するという壮大なプロジェクトです。

「500体の図像を持つ洞窟」と称されるマルスーラス遺跡は、貴重な壁画を守るため、現在では一般公開されていません。

この動画に関連する記事は、2017年10月号(9月28日発売)に掲載されています。