考古学的発見

古代エジプトのパレットが語る色彩の秘密――書記の道具に隠された画家たちの知恵

第16回となる「エジプトのノート」シリーズでは、ルクソールにあるイプウキとネブアモンの墓に描かれた、きわめて珍しいパレットの表現を観察します。そこから、古代エジプトの芸術家たちが実際に使用した道具や、彼らの絵画制作を導いていたかもしれない概念について考察してみましょう。

古代エジプトのパレットが語る色彩の秘密――書記の道具に隠された画家たちの知恵

書記のパレットと筆箱。イプウキとネブアモンの墓(ルクソール)

イプウキとネブアモンの墓には、奇妙な書記用パレットの描写があります。葦ペンと、赤と黒の顔料を収めた2つの壺が描かれているのですが、この壺は真上からの視点と横からの視点が混在した、まるでキュビズムのような描き方で表現されています。これは発掘で出土した実物や、他の場面で描かれたパレットのモデルとは大きく異なる点です。

キュビズム風に描かれたように見える書記のパレット

書記のパレットには通常、黒と赤の2色のインクが描かれます。これらはパピルスにヒエログリフやヒエラティック(神官文字)で文章を書く際に使われたものです。赤は見出しや章題などに用いられ、黒で書かれた本文と区別されました。発掘調査でもこうした道具が実際に見つかっており、中には当時のままの顔料が残されているものもあります。黒インクは有機物を燃やして得られる煤(すす)を原料とし、接着剤には通常アラビアゴムが使われました。このインクは非常に安定しており、色あせせず、パピルスにも悪影響を与えません。一方、赤は酸化鉄を豊富に含む土から作られています。

古代エジプトのパレットが語る色彩の秘密――書記の道具に隠された画家たちの知恵

アメン神の最高神官スメンデスの名を刻んだパレット。第三中間期(紀元前1000年頃)。©メトロポリタン美術館(ニューヨーク)

その他のパレットからは、さらに複雑な道具の存在がうかがい知れます。それらはパピルス、木材、オストラコン(陶器片や石灰岩片を書写媒体としたもの)、さらには壁画への作業に関連したものでしょう。ただし、収められた顔料の量は、そのような大規模な活動には不十分なようです。こうしたパレットにはより多くのくぼみが設けられ、通常は青、緑、黄、赤、黒、白という色が揃っています。場合によっては1色だけ欠けていたり、同じ色が2つ収められていたりすることもありますが、その理由は今なお謎のままです。

古代エジプトのパレットが語る色彩の秘密――書記の道具に隠された画家たちの知恵

6つの顔料皿を備えた象牙製パレット。楕円形のカルトゥーシュにはアメンホテプ3世の王名「ネブマートラー・メリエンラー」、すなわち「ラーは正義(マアト)の所有者、ラーに愛される者」が刻まれています。紀元前14世紀。©メトロポリタン美術館(ニューヨーク)

パレットの色は場面を囲む「装飾帯」にも現れている

葬祭礼拝堂の壁画には、さまざまな場面を区切るフリーズ(装飾帯)が巡らされ、そこにも古代エジプトのパレットの色彩が反映されています。これらは連続する線と、青・黄・赤・緑の長方形の列で構成され、白い部分と黒い線によって区切られています。研究者にとってこの装飾帯は貴重な手がかりとなります。混合されていない純粋な色、つまり芸術家たちの絵具壺に入っていた色そのものを特定できるからです。

イプウキとネブアモンの墓(ルクソール、貴族の谷)では、X線蛍光分析の結果、緑と青の顔料(エジプシャングリーンとエジプシャンブルー)に含まれる銅に、同一の割合のヒ素不純物(0.35%)が検出されました。これは、これらの顔料の合成に不可欠な金属の出所が同じであったことを示唆しています。一方、やや後の時代に属するアメヌアフスーの墓では、ヒ素の不純物は銅の0.05%にとどまっており、別の金属源が用いられたか、鉱石の精製方法が変更されたことがわかります。

古代エジプトのパレットが語る色彩の秘密――書記の道具に隠された画家たちの知恵

紫外線ランプを手に場面の縁取りを観察するリエージュ大学の研究者カトリーヌ・ドフェイト氏。イプウキとネブアモンの墓 ©MAFTO-LAMS CNRS

こうした装飾要素や芸術家の道具について、ルクソールのエジプト絵画を研究する学際的チームの一員であり、分子構造考古学研究所(ソルボンヌ大学-CNRS)でニコラ・プッサンなどの絵画技法を専門とするエレーヌ・グランヴィル氏は、次のように述べています。

「私たちが装飾帯として捉えているものには、常に同じ順序で、この秩序ある世界の色が込められています。青と黄、そして緑と赤。これらは何千年も後に科学者が『補色』と名づけることになる色の『対』であり、美術史を通じて受け継がれてきました。また、職人あるいはエジプトの芸術家が、赤の下には厳密に白色の下塗りを施し、黄の下には施さなかったという事実は、何らかの明確な目的をもった意図的な選択だったことを示しています。それが個人の気まぐれだったのかどうかを見極めるには、より多くの装飾墓を調査する必要があるでしょう。」

さらに同氏はこう付け加えます。

「補色や彩色下塗りの重要性について語ることは、時代錯誤に思えるかもしれません。作品に対する人間の知覚の複雑さを考慮したこれらの概念は、ここ数世紀になってようやく理解されたものであり、エジプトの画家たちがそれを意識していた証拠はありません。しかし忘れてはならないのは、科学的に現象へ名前をつけていないからといって、理解していなかったことにはならないという点です。19世紀初頭のトマス・ヤングは、目の中に3種類の色受容体が存在すると、その科学的観察よりはるかに前に仮定しましたし、レオナルド・ダ・ヴィンチはレイリーやティンダルよりも先に、空が青く見える理由を説明していました。」

「エジプトのノート」シリーズ画像ギャラリー

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「エジプトのノート」バックナンバー

第1回:古代エジプトの画家たちはどのように働いていたのか?
第2回:ナクタモンの葬祭礼拝堂を訪ねて
第3回:エジプト絵画の顔料
第4回:壁画の現代的な記録・保存手法
第5回:ラムセス2世の永遠の記念碑を再発見する
第6回:光で顔料を浮かび上がらせる――可視と不可視
第7回:イメージを通じて研究を体験する
第8回:ネブアモンとイプウキの墓の壁画調査の始まり
第9回:アメンホテプ3世時代、二人の芸術家が共有した墓
第10回:古代エジプトの芸術家アメヌアフスーの墓が明かすもの
第11回:エジプトのミイラに施された奇妙な用途
第12回:「なぜすべての芸術家がここに来ないのか?」
第13回:エジプト人はなぜ人物を横向きで描いたのか?
第14回:エジプトの墓に見る工芸の実践
第15回:エジプトの香水について
第16回:エジプトのパレットの色
第17回:エジプト語には「芸術」を指す言葉がない
第18回:エジプトでの科学調査のある一日