考古学的発見

人工知能が解き明かす古代バビロニア文書――深層学習で粘土板の失われた文字を復元

人工知能(AI)の進化により、失われた古代の歴史的遺産を再び読み取ることが可能になりつつあります。イスラエルの研究チームは、深層学習(ディープラーニング)モデルを活用し、粘土板に刻まれたバビロニアの文字文書の復元に成功しました。

人工知能が解き明かす古代バビロニア文書――深層学習で粘土板の失われた文字を復元

何世紀にもわたって判読不能だった粘土板の文字。その復元を可能にしたのが、人工知能の一分野である「深層学習」です。

メソポタミアから出土した数十万点の粘土板

メソポタミアでは、これまでに数十万点もの粘土板が発見されています。しかし、出土しているからといって、刻まれた文字がすべて読めるわけではありません。長い歳月の間に碑文の多くが破損し、判読不能な状態になっていたのです。

2020年9月1日に米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された研究論文で、AIと考古学を専門とする科学者たちは、アケメネス朝ペルシア帝国期(紀元前539年~紀元前331年)のバビロニア文明において、アッカド語の楔形文字で記された行政文書をどのようにして解読したのかを詳しく説明しています。

少しずつ蘇る過去の記録

判読不能な単語の特定を可能にしたのは、人工知能、とりわけその一形態である深層学習です。研究チームが採用したのは、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)と呼ばれるモデルでした。

このモデルはすでに自動翻訳の分野で実績があり、テキストコーパス(文章集合)の文を分析することで、言語の微妙なニュアンスを学び取ります。学習を繰り返すうちに、ネットワークはコーパスの構造や意味への理解を深め、元の文書に欠けている単語を推測できるようになるのです。

「深層学習」とは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)が過去に出会った形や物体から学ぶように、ソフトウェア自身がデータから学習して動作する仕組みのことを指します。

研究対象として行政文書が選ばれたのは偶然ではありません。行政文書は形式が厳格で構造が類似しており、深層学習モデルによる解析が容易だからです。研究チームは、楔形文字の原文をラテン文字に転写した「翻字」テキスト1,400件からなるコーパスを、深層学習モデルで解析しました。

研究の中で、モデルは粘土板のテキストから作成された52問の多肢選択式問題でテストされました。AIの課題は、欠落した単語を4つの選択肢の中から当てることです。その結果、AIは88.5%の確率で正しい選択を行うことに成功しました。

研究者らは、「予想どおり、モデルは文の構造の認識に優れていた」と評価するとともに、「さらに驚くべきことに、文の意味の把握にも優れていた」と指摘しています。

研究者の貴重な時間を節約するツールへ

深層学習モデルは、現代のラテン文字に対しては高い精度を発揮します。しかし、アラビア文字のような複雑な字形を持つ文字体系や、アッカド語のようにデジタル化された記録が少ない言語については、必ずしも同じ性能を発揮できるわけではありません。

それでも研究チームは、データベースの充実が進めば、将来的には科学や文学など、より複雑なジャンルの文献の補完も可能になると期待しています。

RNNの活用は、アケメネス朝ペルシア帝国を研究する歴史学者、研究者、学生たちの作業を大きく支援する可能性があります。研究チームはこの目的のため、自らのモデルを「アトラハシス(Atrahasis)」というデジタルツールに組み込みました。これは、劣化した楔形文字テキストの復元に役立つ実用的なツールです。