ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年〜1791年)は、古典派を代表する作曲家として世界中で愛されていますが、その家族構成や子孫については意外と知られていません。この記事では、「モーツァルトにいとこはいたのか」「直系の子孫は今も存在するのか」という疑問に答えながら、モーツァルト家の系譜をたどっていきます。
モーツァルトのいとこ――「ベーズレ」と呼ばれた女性
モーツァルトには、実在したいとこがいます。父レオポルト・モーツァルトの兄にあたるフランツ・アロイス・モーツァルトの娘、マリア・アンナ・テクラ・モーツァルト(1758年〜1841年)です。彼女はモーツァルトより5歳年少で、「ベーズレ(Bäsle=いとこちゃん)」という愛称で親しまれていました。
1777年から1779年にかけて、モーツァルトは母とともにザルツブルクを離れて旅に出た際、アウクスブルクで彼女と再会しました。以降に交わされた手紙は戯れと冗談に満ちた内容で有名で、「ベーズレ書簡」と呼ばれ、当時のモーツァルトの人柄を知る貴重な資料となっています。
姉ナンネル――もう一人の才能ある音楽家
モーツァルトの兄弟姉妹の中で成人したのは、5歳上の姉マリア・アンナ・ヴァルブルガ・イグナティア(愛称ナンネル、1751年〜1829年)だけでした。ナンネル自身も優れたクラヴィーア奏者であり、幼い頃は弟とともにヨーロッパ各地を巡る演奏旅行で神童として名を馳せました。
ナンネルは後にザルツブルク近郊ザンクト・ギルゲンの役人ヨハン・バプティスト・フォン・ベルヒトルト・ツー・ゾネンブルクと結婚し、子どもにも恵まれました。そのため、直系ではありませんが、ナンネルの血を引く子孫が今日まで続いている可能性があるとされています。
直系の子孫は存在しない
一方、モーツァルト自身の直系の子孫については、答えは明確です。結論から言えば、モーツァルトの直系の子孫は現在存在しません。
モーツァルトと妻コンスタンツェとの間には6人の子どもが生まれましたが、成人まで育ったのは以下の2人の息子だけでした。
長男 カール・トーマス・モーツァルト(1784年〜1858年)
カール・トーマスは幼少期から音楽の才能を示し、ピアニストや音楽教師としての道も模索しましたが、最終的にはミラノでオーストリア帝国の官吏として働く道を選びました。生涯結婚することなく、子どもはもうけていません。
次男 フランツ・クサーヴァー・ヴォルフガング・モーツァルト(1791年〜1844年)
モーツァルトが亡くなる数か月前に生まれた末子フランツ・クサーヴァーは、「モーツァルト2世」と呼ばれるほどの作曲家・ピアニストへと成長し、ウィーンやリヴィウ(レンベルク)で音楽活動を展開しました。しかし彼もまた生涯独身を貫き、子どもはいませんでした。
こうして、モーツァルトの直系の血筋は、2人の息子が世を去った19世紀半ばに途絶えることとなりました。
まとめ
モーツァルトには「ベーズレ」の愛称で親しまれたいとこが確かに存在し、姉ナンネルの系統を通じて遠い親戚の子孫が今日まで続いている可能性があります。しかし、本人の直系の子孫は残りませんでした。天才の血は直接受け継がれなかったものの、モーツァルトが遺した数々の名曲こそが、後世へ受け継がれた彼の真の「遺産」と言えるでしょう。