考古学的発見

ツタンカーメン王の死因をめぐる謎――新研究が示す「マラリアと骨壊死」の真実

今回の新しい研究では、古代エジプトのファラオ、ツタンカーメン王(在位:紀元前1332年頃〜同1323年頃)の直接的な死因については、あえて明言されていません。研究者たちが死因の断定を避けたのは、3300年以上前の遺体から得られる情報には限界があるためです。

ただし、これまでの科学的分析によれば、ツタンカーメン王は19歳前後という若さで亡くなったと考えられており、その死はマラリアに起因する合併症と骨壊死(こつえし)が重なった結果である可能性が高いとされています。

DNA解析が明かした若きファラオの健康状態

2010年に国際研究チームが発表したDNA解析では、王のミイラから熱帯熱マラリア原虫のDNAが検出されました。同時に、左足の骨に血行障害によって組織が死滅する「無腐性骨壊死」の痕跡も確認されています。

さらに、王は先天的な足の変形を抱えていたとみられ、歩行を補助するための松葉杖が数多く墓から出土していることでも知られています。慢性的な病気を抱える中でマラリア感染が加わり、致命的な状態に陥ったというのが、現在の最も有力な見解です。

かつて語られた「他殺説」とその変遷

ツタンカーメンの死因については、長年にわたりさまざまな説が飛び交ってきました。

  • 他殺説: 1968年のX線検査で頭部に損傷が確認されたことから、「宮廷内の権力闘争で暗殺されたのではないか」という説が広まりました。しかし、2005年のCTスキャンにより、この損傷はミイラ化処理の過程で生じたものと判明しています。
  • 戦車事故説: 胸部や肋骨の骨折から、戦車の競走や狩りでの事故死ではないかという説も提唱されましたが、骨折もミイラ作製時の損傷である可能性が指摘されています。
  • 病死説: 近親婚による遺伝的弱点や感染症など、複数の要因が絡み合って死亡したとする説が、現在の主流となっています。

まとめ

最新の研究は決定的な死因を提示していないものの、マラリアと骨壊死という複合的な健康問題が若きファラオの命を奪った可能性を裏付けるものとなっています。古代最大級の考古学的発見とされるツタンカーメンの墓からは、今後も新たな知見がもたらされることが期待されます。