太陽光が届かない洞窟の深部に描かれた壁画
フランスのラスコー洞窟では、入口から遠く離れた洞窟の最深部に、約1万7千年前のものとされる壮大な先史時代の壁画が発見されました。しかし、これらの場所には一切日光が届かず、当時の人々がどのように足元や岩壁を見ながら移動し、絵を描いたのかを直接裏付ける記録や証拠は、現在までにほとんど残っていません。
考古学からわかる照明の手がかり
直接的な証拠が乏しいとはいえ、発掘調査からはいくつかの有力なヒントが見つかっています。
1. 動物性脂肪を燃やす石製ランプ
ラスコー洞窟内では、浅い皿状にくり抜かれた砂岩製の「石灯(せきとう)」が実際に発見されています。これらのランプには動物の脂肪が燃料として使われていたと考えられており、炎の実験によれば、松明よりも煙が少なく、長時間安定した明かりを提供できたことがわかっています。
2. 松明と炭の痕跡
壁面や床面には煤(すす)の跡や炭の残骸も確認されており、移動中には松明を使用していた可能性が指摘されています。ただし、松明は酸素を大量に消費し、煙も発生するため、狭い奥部での使用には限界があったとみられます。
まとめ
先史時代の画家たちが具体的にどんな道具や方法で暗闇を照らしたのか、その詳細を示す決定的な証拠はまだ見つかっていません。しかし、出土した石製ランプや煤の痕跡から、動物性脂肪を燃料とした照明を駆使し、何時間もかけて洞窟の奥へ入り込んでいたことは間違いないと考えられています。彼らの技術と工夫の正確な姿は、今後の研究の進展を待つしかありません。