歴史上の人物

マックレイカー(糾弾記者)が扱わなかった題材は?――唯一の例外「米西戦争」

アメリカのジャーナリズム史において、マックレイカー(muckraker)と呼ばれる調査報道記者たちは、19世紀末から20世紀初頭にかけて大きな影響力を持ちました。彼らはアメリカ社会に潜む汚職や不正義を暴くことを使命とし、進歩主義時代(プログレッシブ・エラ)の社会改革運動を後押しした存在として知られています。

マックレイカーとは何か

「マックレイカー」という呼称は、セオドア・ルーズベルト大統領が1906年の演説で用いたことに由来するとされます。彼らの主な関心は、政治の腐敗、大企業による独占、労働者の劣悪な環境、食品衛生問題など、国内の社会的・経済的な問題に集中していました。

代表的なマックレイカーたち

  • アイダ・ターベル(Ida Tarbell):『スタンダード・オイル会社の歴史』で、ロックフェラー率いる石油独占企業の不当な手法を暴露しました。
  • リンカーン・ステフェンズ(Lincoln Steffens):『都市の恥』で、アメリカ各都市における政治腐敗の実態を告発しました。
  • アプトン・シンクレア(Upton Sinclair):小説『ジャングル(The Jungle)』でシカゴの食肉加工業界の劣悪な衛生状態を描き、のちの食品衛生法制整備のきっかけを作りました。

例外となった「米西戦争」

「次のうち、マックレイカーが取り上げる可能性が最も低いテーマはどれか」という問いに対する答えは、米西戦争(1898年)です。米西戦争は海外で行われた軍事紛争であり、当時の戦争報道は、ハーストやピューリッツァーに代表されるセンセーショナルな大衆紙、いわゆる「イエロー・ジャーナリズム」や従軍記者たちによって担われていました。

マックレイカーの活動はあくまで国内の社会問題――政治汚職、企業の不正、貧困、労働環境など――の調査と暴露に焦点が当てられていたため、武力紛争そのものは彼らの主要な取材対象にはなりませんでした。

まとめ

マックレイカーは、政治腐敗、独占企業の実態、労働問題、食品衛生といった国内の不正義を暴いた調査報道記者たちです。一方、米西戦争のような軍事紛争は、従軍記者や大衆紙が扱う領域であり、マックレイカーの主題からは外れていました。これこそが、この問題における唯一の「例外」です。