歴史上の人物

アブナー・ダブルデイ将軍はどんな人物?「野球の発明者」という伝説の真相

アブナー・ダブルデイ(Abner Doubleday、1819年〜1893年)は、南北戦争で活躍した北軍の将軍として知られるアメリカの軍人です。しかし、日本でもしばしば紹介される「野球を発明した人物」という有名な逸話は、実は歴史的な根拠がまったく存在しないことが判明しています。

「1839年、クーパーズタウンで野球を発明」は誤り

長年にわたり、ダブルデイが1839年にニューヨーク州クーパーズタウンで野球のルールを確立し、最初の試合を行ったと信じられてきました。この説に基づき、クーパーズタウンには野球殿堂(ナショナル・ベースボール・ホール・オブ・フェーム)が建設されました。

ところが、当時の記録や書簡、日記などを精査しても、ダブルデイが野球の考案に関わったことを示す証拠は一切見つかっていません。そもそも1839年当時、彼はウェストポイントの陸軍士官学校に在籍しており、クーパーズタウンに滞在していた記録すらないのです。

伝説が生まれた背景

この伝説が広まったきっかけは、1907年のことです。野球の起源を調査していた「ミルズ委員会」がある人物の証言をもとに「野球はダブルデイが発明した」と結論づけました。アメリカ生まれの国民的スポーツというアイデンティティを高めたいという思惑もあり、この説は公式な見解として採用されました。

野球の実際の起源

現在の研究では、野球はイギリスのラウンダーズやクリケットといったバットとボールを使う遊びから徐々に進化したものだと考えられています。特に1845年、アレグザンダー・カートライト率いるニッカーボッカー・ベースボール・クラブが現代につながるルールを整備したことが、野球の制度化における重要な節目とされています。

まとめ

アブナー・ダブルデイ将軍は、優れた軍人として南北戦争などで貢献した人物ではありますが、「野球の発明者」として語られることには歴史的事実がありません。彼にまつわる野球発祥の物語は、20世紀初頭に生み出された美しい伝説にとどまるのです。