1945年にアメリカで鋳造された10セント硬貨は、愛称「マーキュリーダイム」として知られるシリーズの最終年にあたる記念すべき一枚です。表面には翼のある自由の女神、裏面にはファスケス(束ねられた杖)とオリーブの枝が描かれ、1916年の登場から約30年間にわたり親しまれてきたデザインの締めくくりとなる年でした。
表面(オモテ)のデザイン
表面には、フリギア帽をかぶり、翼を広げた自由の女神の横顔が左向きに描かれています。この翼は「自由な思考」を象徴するとされ、神話の神メルクリウス(マーキュリー)に見立てられたことから、この硬貨は「マーキュリーダイム」と呼ばれるようになりました。
上部には「LIBERTY(自由)」、下部には製造年「1945」が刻まれ、首元の下側には「IN GOD WE TRUST(我ら神を信ず)」の銘文が配されています。この美しいデザインは、彫刻家アドルフ・A・ワインマンによって手掛けられました。
裏面(ウラ)のデザイン
裏面の中央には、斧を伴う束杖「ファスケス」が描かれ、その左側にはオリーブの枝が添えられています。ファスケスは古代ローマにおける権力と団結の象徴であり、オリーブの枝は平和への願いを表しています。
上部には「UNITED STATES OF AMERICA」、下部には額面を示す「ONE DIME」、右側には「E PLURIBUS UNUM(多数から一つへ)」の標語が刻まれています。この裏面デザインもまた、ワインマンによるもので、1916年のシリーズ開始から一貫して使用されました。
基本スペックと鋳造局
1945年の10セント硬貨は、以下の3つの造幣局で鋳造されました。
・フィラデルフィア造幣局(ミントマークなし)
・デンバー造幣局(ミントマーク「D」)
・サンフランシスコ造幣局(ミントマーク「S」)
主な仕様は次の通りです。
・素材:銀90%、銅10%
・直径:17.9mm
・重量:約2.5グラム
収集価値と見どころ
1945年はマーキュリーダイムの最終年であるため、歴史的な区切りとして高い人気があります。翌1946年からはフランクリン・ルーズベルト大統領の肖像をあしらった「ルーズベルト・ダイム」へとデザインが切り替わったため、この年は旧デザインの幕引きとなりました。
中でもサンフランシスコ造幣局製の「1945-S」には、ミントマーク「S」が通常より小さく刻まれた「マイクロS」と呼ばれる希少な変種が存在し、コレクターの間で高値で取引されることで知られています。また、銀含有量が90%と高いため、地金価格の下支えもあり、状態(グレード)の良い個体ほど価値が大きく上がります。収集の際は、ミントマークの確認と保存状態のチェックを忘れないようにしましょう。