ビクトリア朝時代のイギリスでは、今日のような十進法の通貨ではなく、ポンド(£)・シリング(s.)・ペンス(d.)という3つの単位を組み合わせた通貨体系が使われていました。一見複雑に思えますが、基本のルールを押さえれば、足し算・引き算・掛け算・割り算はどれもきちんと計算できます。この記事では、当時の金額表記「£ s. d.」を用いた計算のやり方を、具体例とともにわかりやすく解説します。
ビクトリア朝の通貨体系の基本ルール
計算を始める前に、まず単位同士の関係を確認しましょう。
1ポンド(£)= 20シリング(s.)= 240ペンス(d.)
1シリング(s.)= 12ペンス(d.)
ポイントは次の2つです。
・ペンスが12になったら、1シリングに繰り上げる
・シリングが20になったら、1ポンドに繰り上げる
この「12」と「20」という繰り上がりの境目さえ意識すれば、あとは通常の筆算と同じ要領で計算を進められます。
足し算のやり方
二つの金額を足すときは、£・s.・d.の各列を縦に揃え、右側の列(ペンス)から順に加えていきます。
【例】1ポンド2シリング3ペンス + 4ポンド5シリング6ペンス
£ s. d.
1 2 3
+4 5 6
─────────
5 7 9
・ペンス:3+6=9(12未満なのでそのまま)
・シリング:2+5=7(20未満なのでそのまま)
・ポンド:1+4=5
よって答えは5ポンド7シリング9ペンス(£5 7s. 9d.)です。もしペンスやシリングが境界を超えたら、忘れずに繰り上げを行いましょう。
引き算のやり方
引き算も同じく各列を揃えて計算します。下の位が引けないときは、上の位から1を借りてきます(シリングを1借りると12ペンス、ポンドを1借りると20シリングになります)。
【例】4ポンド5シリング6ペンス − 1ポンド2シリング3ペンス
£ s. d.
4 5 6
−1 2 3
─────────
3 3 3
各列ともそのまま引けるため繰り借りは不要で、答えは3ポンド3シリング3ペンスです。なお、引く金額の方が大きい場合は、結果がマイナス(負債)になる点にも注意が必要です。
掛け算のやり方
金額の掛け算では、通常、金額に整数(個数や数量など)を掛ける形で計算します。ペンス→シリング→ポンドの順に掛けていき、12や20を超えたら繰り上げるのがコツです。
【例】1ポンド2シリング3ペンス × 4
・ペンス:3×4=12ペンス → 1シリングに繰り上げ、余りは0ペンス
・シリング:2×4=8 + 繰り上げ1 = 9シリング
・ポンド:1×4=4ポンド
よって答えは4ポンド9シリング0ペンスです。
割り算のやり方
割り算も、金額を整数で割る形で行います。割り切れない場合は、余りを下の位の単位に換算しながら計算を続けます。
【例】1ポンド2シリング3ペンス ÷ 3
・ポンド:1÷3=0 余り1ポンド → 20シリングに換算して下の位へ
・シリング:(2+20)÷3=22÷3=7 余り1シリング → 12ペンスに換算して下の位へ
・ペンス:(3+12)÷3=15÷3=5ペンス
よって答えは0ポンド7シリング5ペンス(7シリング5ペンス)です。
分数(半ペンスなど)を含む計算
ビクトリア朝の金額には、ハーフペニー(半ペンス)のように分数を含むケースがありました。ここでは「1/2」を例に、基本的な計算方法を見ていきましょう。
分数の足し算
分母を揃えてから加えます。1/2ペンスを加える例:
1ポンド2シリング3ペンス + 1/2 = 1ポンド2シリング3・1/2ペンス
分数の引き算
こちらも分母を揃えてから引きます。
1ポンド2シリング3ペンス − 1/2 = 1ポンド2シリング2・1/2ペンス
分数の掛け算
分子同士、分母同士を掛け合わせます。金額を1/2倍(半分)にする例:
1ポンド2シリング3ペンス × 1/2 = 0ポンド11シリング1・1/2ペンス
(1ポンド2シリング3ペンスは合計267ペンスなので、その半分は133.5ペンス=11シリング1.5ペンスになります)
分数の割り算
割る数を逆数にひっくり返して掛けます。1/2で割ることは、2倍することと同じです。
1ポンド2シリング3ペンス ÷ 1/2 = 2ポンド4シリング6ペンス
まとめ
ビクトリア朝の通貨計算は一見面倒に感じられますが、「12ペンスで1シリング、20シリングで1ポンド」という繰り上がりのルールさえ守れば、普通の筆算と同じ感覚で処理できます。実はこの複雑な£ s. d.体系は、1971年の通貨の十進化(デシマリゼーション)まで約千年にわたって使われ続けました。当時の人々が日常的にこうした計算をこなしていたと思うと、その歴史の奥深さが感じられますね。