歴史上の人物

ホロコーストで病気や障害者を示した象徴とは? 黒い逆三角形の意味と歴史

ナチス・ドイツが運営した強制収容所では、収容者一人ひとりを分類するために、囚人服に色別の逆三角形(ドイツ語で「ウィンケル」と呼ばれる)の布片を縫い付けていました。その中で、病気や障害を抱える人々を示すのに使われたのが黒い三角形です。

黒い三角形が意味していたもの

黒い逆三角形は、労働に適さないと判断された身体的・精神的な障害者だけでなく、浮浪者、アルコール依存症患者など、ナチス政権が「反社会分子(アゾツィアーレ)」と一括りにした人々にも付けられました。

この分類は医学的根拠に基づくものではなく、「国家にとっての有用性」という恣意的な基準で決められていました。そのため、多くの罪のない人々が不当に差別の標識を着けさせられることになったのです。

収容所での過酷な運命

黒い三角マークを付けられた囚人の多くは、労働力としての価値がないと判断されると、収容所に到着して間もなくガス室へ送られることもありました。生き残った者も、過酷な強制労働、飢餓、劣悪な衛生環境の中で命を落としていきました。

T4作戦――障害者への組織的な大量殺戮

強制収容所以外にも、ナチス政権は1939年に開始した「T4作戦(障害者安楽死計画)」により、精神・身体障害者を体系的に抹殺しました。グラーフェネックやハーダーマーなどの専用殺害施設では一酸化炭素を使ったガス室が設置され、公式記録だけでも約7万人が犠牲になりました。計画が表向き中止された後も殺害は密かに続き、最終的に20万人以上が犠牲になったと推計されています。

他の三角形との違い

参考までに、収容所で使われた主な三角形の色分けは以下のとおりです。
・赤:政治犯
・緑:「常習犯罪者」
・紫:エホバの証人
・ピンク:同性愛者の男性
・黒:「反社会分子」(障害者、ロマ/シンティなど)
・黄色(六角形のダビデの星):ユダヤ人

忘れてはならない歴史

黒い三角形は、ナチスの人種思想と優生思想がもたらした悲劇を今に伝える象徴です。現在では、障害者やマイノリティの尊厳を守る記念活動において、抵抗と記憶のシンボルとして用いられることもあります。ホロコーストの歴史を学ぶことは、差別と排除の悲劇が二度と繰り返されないようにするための重要な一歩となるでしょう。