歴史クイズ

コミュニケーションは不可能だと信じ、指を振るだけで応えた古代ギリシャの懐疑論者ゴルギアスとは?

古代ギリシャのソフィスト(智者・弁論家)であるゴルギアス(Gorgias)こそが、「コミュニケーションは不可能である」と信じた懐疑論者です。


興味深いことに、彼は議論の相手に対して言葉で反論することなく、指を振ってみせるという象徴的なジェスチャーだけで応えていました。これは「そもそも言葉による意思疎通自体が成立しない」という自身の哲学を、あえて行動で示したものとされています。


ゴルギアスが説いた「コミュニケーション不可能」の三つの理由


ゴルギアスは著書『非存在について』の中で、コミュニケーションが不可能である根拠として、次の三段階の論証を提示しました。


1. 何も存在しない

第一に、この世界には何も存在しない、という主張です。あらゆる存在を否定する、徹底した虚無主義的な立場です。


2. たとえ存在しても、それは認識できない

第二に、仮に何かが存在していたとしても、人間の認識能力ではそれを知ることができない、という主張です。存在と認識との間には、越えられない溝があると考えました。


3. たとえ認識できても、他者に伝えることはできない

第三に、仮に何かを認識できたとしても、それを他者に正確に伝えることはできない、という主張です。自分の内にある認識を、言葉によって他人にそのまま移し渡すことは不可能だ、というのです。


ゴルギアスという人物について


ゴルギアス(紀元前483年頃〜紀元前375年頃)は、シチリア島のレオンティオイ(現レオンティーニ)出身の弁論家・修辞学者です。修辞学の大成者として名高く、高額な報酬を得て弁論術を教えたことでも知られています。


皮肉なことに、「コミュニケーションは不可能」と説きながら、彼自身は当時最高の雄弁家として名を馳せていました。この矛盾こそが、彼の思想を一層興味深いものにしているのかもしれません。