1億5500万年にわたり空を支配した翼竜たち
スズメほどの小型種から、翼開長数メートルに達する巨大な「空飛ぶ竜」まで。翼竜(プテロサウルス)は、恐竜時代の空を1億5500万年にわたって支配してきました。科学の定説では、彼らは約6500万年前の大量絶滅で姿を消したとされています。しかし、世界中には翼竜が今なお地球の奥地で生き延び、大空を翔けていると確信し、その姿を追い続ける人々が存在します。
クリプトゾオロジーと「生きた化石」への執念
科学的に未確認の生物(UMA)の存在を信じ、その調査を行う人々を「クリプトゾオロジスト(未確認動物学者)」と呼びます。ネッシー、チュパカブラ、イエティ、ビッグフット……。彼らの追う対象の多くは大衆文化の定番となっていますが、その「証拠」の多くは乏しいものです。しかし、翼竜のケースでは、状況がやや異なります。 19世紀の「翼竜の死体写真」から、現代に至るまで多数の「巨大な飛行爬虫類を目撃した」という証言が存在するのです。これらは単なる妄想なのか、それとも何か真実の断片が含まれているのか。
目撃証言の数々──アラスカからテキサス、アフリカへ
アラスカ上空の巨影(2002年・2018年)
国際クリプトゾオロジー学会によれば、翼竜らしき生物はメキシコのシエラ・マドレ山脈、ブラジル、アフリカなど世界各地で目撃されています。中でも有名なのが、2002年にアラスカでパイロットのジョン・ブーカー氏と乗客たちが遭遇した事例です(英『テレグラフ』紙も報道)。ブーカー氏が操縦するセスナ機(翼幅約4.3メートル)と並ぶほどの巨大な翼を持つ生物が、マノコタックへの航路で出現したというのです。
2018年には州都ジュノーのメンデンホールバレーでも複数の住民が目撃。タビサ・バウターさんは「道路幅ほどの翼開長(約6メートル)の巨大な黒い鳥」を目撃し、「カラスでもワシでもない。冗談じゃない。小型機ほどの大きさだった」と証言しています。彼女は「羽毛があったが嘴は見えなかった」とも述べており、複数の住民が同様の「巨大な謎の鳥」を見たと証言しています。
テキサスの「プテロサウルス騒動」(1970年代)
1970年代、テキサス州でも一連の目撃情報が相次ぎました。地元メディアが報じ、テレビでは「翼竜のものとされる足跡(長さ約30センチ)」まで放送されました。ブラウンズビル在住のアルベリコ・グアハルド氏は、夜中に奇妙な音で目が覚め、外に出ると「鳥に似ているが鳥ではない、この世のものとは思えない巨大な生物」を目撃したと証言。これをきっかけに類似の証言が殺到し、地元ラジオ局が懸賞金までかけました。なお、同年代にテキサスでは翼開長約11メートルのケツァルコアトルスの化石が発見されており、それが騒動を加熱させた可能性も指摘されています。
アフリカの「コンゴマト」とナミビアの「滑空竜」
1980年代後半、生物学者でクリプトゾオロジストのロイ・マッカル教授(ネッシー探索やアフリカのモケレ・ムベンベ探索でも知られる)は、ザンビア西部のジウンドゥ湿原へ向かいました。現地カオンデ族の伝承には、「ワニのような長い尾と歯のある嘴、コウモリのような巨大な翼を持つ大トカゲ」の姿をしたコンゴマトという飛行生物が登場します。同様の報告はアンゴラ、タンザニア、ジンバブエ、ザイール(現コンゴ民主共和国)からも寄せられています。ナミビアの砂漠地帯では、翼開長9メートルほどの巨大な滑空生物が夕暮れに丘陵間を飛ぶとの噂もありましたが、いずれの探査も成果を上げることはできませんでした。
パプアニューギニアの「ロペン」──最も有力視される候補地
2009年、アメリカのクリプトゾオロジスト、ガース・ゲスマン氏はパプアニューギニアのジャングルへ遠征しました。現地の住民たちが「ロペン(Ropen)」と呼ぶ、強力な飛行爬虫類の存在を追うためです。ゲスマン氏のチームには、ポーツマス大学の翼竜専門家デイブ・マーティル博士やコウモリの専門家も同行しており、「未知の大型コウモリの可能性」も視野に入れた科学的なアプローチが試みられました。
オセアニア諸島には古くから奇妙な飛行生物の伝承があり、第二次世界大戦中の米兵たちも目撃証言を残しています。心理学者のブライアン・ヘネシー氏(重慶医科大学勤務)は1971年、ブーゲンビル島の熱帯雨林縁辺で遭遇した生物について、後年になって公表しました。
「それは古風で、先史的な、鳥のように羽毛に覆われていない何かだった。長く細い尾、長い嘴、そして後頭部には角のような突起があった」
現地住民は滝の近くの洞窟をロペンの巣だと指摘し、1960年代には戦士たちが一頭を仕留めて食べたという伝承もあります(肉は美味しくなかったとか)。しかし、ゲスマン氏やジョナサン・ホイットコム氏らの探査でも、ロペンの実体を確認することはできませんでした。
ドラゴン、チュパカブラ、サンダーバード──伝説の正体か?
探索が失敗に終わっても、支持者たちは仮説を捨てません。彼らによれば、翼竜こそが世界各地の伝説や未確認生物報告の正体なのだといいます。
- ドラゴン伝説: ヨーロッパやアジアの竜伝説は、生き残った翼竜の記憶か?
- チュパカブラ: 南米で家畜の血を吸うという謎の生物も、翼竜の一種では?
- サンダーバード: 北米先住民が信じた「翼開長5メートルの巨大な嵐の鳥」も、翼竜の誤認では?
「証拠写真」の信憑性と、現代における不在証明
支持者たちが提示する「決定的証拠」の一つが、19世紀アメリカで撮影されたとされる複数の写真です。農夫たちや兵士たちが、巨大な翼を持つ爬虫類の死体とともにポーズをとっています。2011年にも同様の写真がネット上に出回りました。しかし、撮影者、撮影地、撮影日時が一切不明であり、証言者も存在しません。 これほどの「生きた化石」との遭遇が、地域の記憶や記録に一切残っていないのは不自然です。一見リアルに見えても、文脈の欠如は捏造の疑いを強めます。
さらに決定的なのは、スマートフォンで誰もが高画質な動画を撮れる現代において、翼竜の鮮明な写真や動画が「溢れていない」ことです。人類は地球の隅々まで足を伸ばし、ありとあらゆるものを記録・共有する時代です。にもかかわらず、翼竜の死体すら確認されていません。
インターネット上にはフェイクニュースや捏造コンテンツが氾濫しており、真実らしき情報を選別することは極めて困難です。現時点では、数百万年前の爬虫類が人知れず現代の空を飛んでいるというのは、アーバンレジェンドやファンタジーの領域を出るものではありません。