戦争や内乱では、実際にどれほど多くの犠牲者が出たのか、その全体像をつかむことが極めて困難です。米国の非営利団体「Human Rights Data Analysis Group(HRDAG)」は、もともと警戒心の強い野生動物の個体数を推定するために使われてきた統計手法を応用し、不確実性の幅を劇的に狭めることに成功しています。これは政治的な意思決定にとって重要であるだけでなく、事後的な正義の実現――もしそれが可能だとしてですが――にも不可欠なのです。
コソボ紛争、「消えた5000人」の謎
1999年3月から6月にかけて、セルビア軍はコソボのアルバニア系住民に対するテロ作戦を展開し、民間人と武装勢力を合わせて9000人から1万2000人が死亡したとされます。少なくとも、2002年の報告書はそう結論づけています。しかし当時、文書で確認できていた死者はわずか4400人でした。この報告書を作成したのがHRDAGであり、その推計には当然ながら懐疑と批判が集中しました。「確認されていない死者がざっと5000人も、いったいどこから湧いて出るのか」というわけです。
介入するか、しないか
ところが、この推計は2010年、和平が実現し現地での大規模な調査が可能になった後に行われた2件の調査によって裏付けられました。HRDAGは米国に拠点を置く組織で、暴力紛争に関する最良の記録を維持することを核心的なミッションとしています。国際社会が介入すべきかどうかを判断する際、こうした記録はしばしば決定的な役割を果たします。そしてもちろん事後には、責任者の特定と、可能であれば裁判による裁きへとつながるのです。
HRDAG自身は調査員を紛争地域に派遣しません。代わりに既存の情報源をできる限り収集し、それらすべてのデータから総合的な全体像を導き出します。単なる犠牲者の数え上げではないのです。例えばシリア内戦を見てみましょう。さまざまな支援団体や個人が、極めて混沌とした戦場について報告しています。同じ犠牲者が複数の情報源から重複して報告されることもあれば、ある情報源しか知らない犠牲者も存在します。
まったく誤った全体像
HRDAGの研究者メーガン・プライス氏は、第3回ハイデルベルク・ラウレアート・フォーラムでこの研究について講演しました。同フォーラムは毎年8月、数学とコンピュータ科学の最重要賞を受賞した人々が集う年次会合です。「各勢力が報告する犠牲者数を単純に足し合わせると、紛争の全体像を完全に誤って把握しかねません」とプライス氏は述べます。
これは単なる集計の問題にとどまりません。例えば、新たな勢力が戦闘に加わった後にメディアが「紛争が激化した」と報じたり、逆に「新たな展開により週あたりの犠牲者が大幅に減少した」と伝えたりするのは、素朴な数え上げに基づくものです。こうした報道は、西側諸国が介入するかどうか、あるいは一方の勢力に武器や資金で支援するかどうかという決定に大きな影響を与えます。
多重システム推定(MSE)とは
こうした雑多で混乱したデータから比較的信頼性の高い推計値を抽出する数学的手法があります。それが「多重システム推定(Multiple Systems Estimation:MSE)」です。まず、原則として単純だが非常に労力のかかるデータクリーニング、つまり重複排除(de-duplication)を行います。すべての死亡報告が一意の個人に遡れるようにする作業です。同じ人物が異なる名前で何度も「死亡」しているようなデータベースでは意味がありません。2014年1月までにHRDAGが集めたシリア紛争の犠牲者報告は26万件に上りましたが、重複排除後には9万3000件となりました。これが文書化された症例です。では、実際の犠牲者数については何が言えるのでしょうか。
MSEは、かつてノウサギなどの動物種がある地域に何頭生息しているかを推定するために開発された数学的手法を利用します。基本原理は「捕獲・再捕獲法(capture-recapture)」です。まずできるだけ無作為に約100頭のノウサギを捕らえてマークを付けます。数週間後に戻り、また100頭ほどを捕らえます。個体数があまり大きくなければ、2回目にはすでにマーク済みのノウサギが何頭か混ざっているはずです。この2つの標本間の重複の相対的な大きさから、個体群全体の規模を推定できるのです。もちろんこれは不確実性の幅を持つ推定であり、その精度は標本のサイズや重複の程度に左右されます。
混沌とした暴力紛争における多くの名もなき犠牲者を数えるのも、まさにこの方法です。同様の手法は、タブー視される人口集団におけるHIV感染者数の推定、さらには米国の非常に保守的な地域におけるレズビアンの人数の推定にも使われてきました。実践においてもMSEが機能し、妥当な不確実性の幅をもって信頼できる推計値を提供することが示されています。
重なり合う標本
シリアのような戦争に置き換えると、一定期間にわたって現地で犠牲者データを収集する各組織が、それぞれひとつの標本となります。複数の情報源が独立に同じ犠牲者を報告していれば、それは2つ以上の標本間の重複です。母集団から3つ以上の標本を取れば、より高度な手法を使って、標本同士が互いに独立でない可能性まで考慮できます。HRDAGはこうして、コソボ紛争で忘れられた死者たち、そして他の多くの紛争の実態を描き出してきたのです。
ハイデルベルクでの講演で、プライス氏はシリア内戦のある局面を例に挙げました。メディアは「戦闘の激しさが和らいだ」と報じていました。これは報告された犠牲者数を単純に数え上げただけのものでした。しかしHRDAGの分析によれば、各報告間の重複はむしろ減少していたのです。計算が示したのは、戦闘がかえって激化していたという事実でした。プライス氏は言います。「メディアの報道だけを頼りにすると、そうした紛争について完全に誤った結論を導きかねません」
残念ながら、HRDAGのような分析には時間がかかります。ニュースメディアが自分自身に許容しない時間です。それでもプライス氏は、メディアは自分たちの得意分野に徹すべきだと主張します。つまり、個人の物語を伝え、犠牲者に顔を与えることです。そして編集部で一日かけて仕上げられるような武装紛争の統計やインフォグラフィックについては、読者や視聴者は大幅に割り引いて受け取るべきなのです。