スキャンダルは今に始まったことではない
大ヒット映画の監督が主演女優と恋に落ちる。有名歌手が薬物の過剰摂取で命を落とす。セレブのヌード写真がネットに流出する。人気シリーズには近親相姦を描いた衝撃的なシーンが組み込まれる。スキャンダルがスキャンダルを呼ぶ、現代のエンターテインメント業界。
しかし、「昔のハリウッドはもっと純粋だった」「腐敗や退廃はごく最近になって持ち込まれたものだ」と思っているなら、それは大きな誤解です。華やかな銀幕の裏側では、スキャンダルが黄金時代から絶え間なく繰り返されてきました。ただ違うのは、かつてはそれらが巧妙に隠されていたという点だけです。

スタジオシステムが守り抜いた「清潔な偶像」
1920年代から1950年代にかけて、ハリウッドは数社の巨大スタジオが業界を支配する「スタジオシステム」の時代でした。スターたちは厳しい契約の下に置かれ、私生活までもがスタジオの管理対象でした。恋愛、結婚、妊娠、病気――そのすべてが「売れるイメージ」に合わせて操作され、場合によっては捏造さえ行われていました。
さらにスタジオは、有力ゴシップ記者たちと密接な関係を築き、好意的な記事と引き換えに不祥事をもみ消していました。あるスターのスキャンダルが発覚しそうになると、別のスターの秘密を差し出して報道を封じさせる――そんな駆け引きまで日常的に行われていたといわれます。
隠しきれなかった衝撃的な事件
それでも、隠しきれない事件は数多く起こっています。1921年、喜劇王ロスコー・「ファッティ」・アーバックルは、女優ヴァージニア・ラッペの死亡事件への関与を疑われ、全米に大きな衝撃を与えました。最終的には無罪が確定しましたが、彼のキャリアが二度と花開くことはありませんでした。
1950年には、既婚者でありながらイタリアの名匠ロベルト・ロッセリーニと恋に落ち、妊娠したイングリッド・バーグマンがスキャンダルの渦中に置かれます。米上院議場で「悪への強力な影響力」とまで非難された彼女は、ハリウッドを追われるようにヨーロッパへ渡りました。
また、MGMは子役スターだったジュディ・ガーランドに、体重管理と過酷な撮影スケジュールを維持するため、覚醒剤と睡眠薬を日常的に投与していました。この「処方」が、彼女の生涯にわたる薬物依存の一因となったことは広く知られています。
「キャスティング・カウチ」も昔から存在した
役柄と引き換えに肉体関係を求める「キャスティング・カウチ(寝台交渉)」も、決して現代に特有のものではありません。黄金期のハリウッドでは、権力を握る幹部たちが若い俳優や女優に対してこれを横行させていたことが、多くの手記や証言で語られています。スターになりたいという夢が、権力者の欲望の餌食になったのです。
また、俳優ロック・ハドソンの例のように、スタジオはスターの「公式イメージ」を守るためなら、偽装結婚まで用意しました。本当の自分を生きることが許されず、ありのままの姿を隠し続けることを強いられたスターは少なくありません。
変わったのは「隠せなくなった」こと
こうして見ると、ハリウッドの汚い秘密は、昔も今も本質的には何も変わっていません。変わったのは、SNSや24時間態勢の報道が発達し、もはやスキャンダルを隠し通せなくなったこと。そして、被害者が声を上げても、それを受け止める社会の土壌が少しずつ整ってきたことです。
「昔は良かった」というノスタルジアは、単に見えていなかった部分があるだけかもしれません。輝く銀幕の陰に、どれほど多くの犠牲と沈黙があったのか――それを直視することこそが、歴史を正しく理解するための第一歩なのです。