1692年の春、マサチューセッツ湾植民地のセーラムで始まった「セーラム魔女裁判」は、アメリカ史における最も有名な集団ヒステリー事件の一つです。この悲劇的な裁判の発端となったのは、魔術の罪で最初に告発された3人の女性たちでした。
最初に告発された3人の女性
セーラム魔女裁判で最初に魔術容疑をかけられたのは、次の3人です。
- ティトゥバ(Tituba) — バルバドス出身の奴隷
- サラ・グッド(Sarah Good) — 家を持たない貧しい物乞い
- サラ・オズボーン(Sarah Osborne) — 比較的裕福な教会員
彼女たちはいずれも、当時の社会から何らかの形で「異質」と見なされていた人物でした。このことが、告発のきっかけになったと考えられています。
ティトゥバ — 物語と民間魔術を語る奴隷
3人の中で最も注目を集めたのがティトゥバです。混血の彼女は、町の牧師サミュエル・パリスとともにセーラムにやって来ました。ティトゥバは魅力的な物語を語ることで知られ、民間伝承に基づく魔術的な儀式も行っていたといわれています。こうした振る舞いが、周囲から「魔女」と疑われる要因になった可能性があります。
サラ・グッド — 社会から疎外された貧しい女性
サラ・グッドは極貧の中で暮らし、地域社会からしばしば疎外されていた女性でした。口が達者で争いごとを恐れない性格だったため、住民たちにとって格好の標的になりやすかったとされています。社会的弱者への偏見が、告発という形で表面化した典型例といえるでしょう。
サラ・オズボーン — 意外な告発を受けた教会員
3人の中で最も意外な存在だったのがサラ・オズボーンです。彼女は教会の一員として地域で一定の尊敬を受けていました。しかし、隣人との間で訴で訴訟や紛争を繰り返していた過去があり、これが告発につながった可能性が指摘されています。身分や立場に関わらず、対立があれば誰でも標的になり得たことを示す例です。
3人の告発が引き起こした連鎖
この3人に対する告発をきっかけに、セーラムでは魔女狩りのパニックが一気に拡大しました。その後数か月の間に、150人以上が魔術の罪で告発され、20人以上が処刑されるという悲劇へと発展したのです。
セーラム魔女裁判は、恐怖と疑心暗鬼が社会全体を支配するとき、無実の人々がどれほど容易に犠牲になり得るかを今に伝える歴史的教訓として記憶されています。