歴史物語

『検事の来訪』バーリング氏の戦争に関するセリフまとめ

J.B.プリーストリーの戯曲『検事の来訪』(原題:An Inspector Calls)は、1912年のイングランドを舞台に、裕福な工場主アーサー・バーリングの娘シーラの婚約パーティーの夜、突然現れた謎の「グール巡査」が一家の隠された罪を次々と暴いていく作品です。

第一次世界大戦勃発のわずか2年前という時代設定が重要なポイントです。結末を知っている観客にとって、バーリング氏の「戦争は起こらない」という断言は、痛烈なドラマチック・アイロニー(劇的皮肉)として響きます。以下、彼の戦争に関する代表的なセリフを紹介します。

バーリング氏の戦争に関するセリフ一覧

「もうそのようなことから安全なのだ」

"We're safe from all that now."
ストライキや戦争といった社会不安はすでに過ぎ去ったと語るセリフ。根拠のない自信と楽観主義を象徴する発言です。

「誰も戦争など望んでいない。バルカンの半文明国の連中以外はね」

"Nobody wants war, except some half-civilized folks in the Balkans."
他国を軽蔑しつつ、大国同士の戦争の可能性を完全に否定するセリフです。皮肉にも、第一次世界大戦の火種となったのはまさにバルカン半島でした。

「戦争の可能性など皆無だと言っておこう」

"And I say there isn't a chance of war."
断定的な口調で戦争を否定する場面。直後の展開で観客は、この予言がいかに脆かったかを思い知らされます。

「世界はあまりにも速く発展しているので、戦争は不可能になるだろう」

"The world's developing so fast that it'll make war impossible."
科学技術の進歩が戦争を不要にすると信じる、当時の支配階級に典型的な進歩信仰を表すセリフです。

「ドイツ人は戦争を望んでいない」

"The Germans don't want war."
ジェラルドとの会話の中で語られる一言。2年後にイギリスとドイツが開戦することを知る観客には、最大級の皮肉として聞こえます。

なぜこれらのセリフが重要なのか

バーリング氏の発言は、単なる時代背景の描写にとどまりません。彼は傲慢な資本家、既得権益層の象徴として描かれており、「戦争は起こらない」「タイタニックは絶対に沈まない」といった断言は、エリート階級の驕りと無知を浮き彫りにします。

実際の歴史では、1912年に処女航海でタイタニック号が沈没し、1914年に第一次世界大戦が勃発しました。つまり観客は、バーリング氏の予言がすべて外れたことを前提に物語を見ているのです。この仕組みこそが、プリーストリーが訴えた「社会全体の連帯と責任」というテーマを強力に支えています。

受験や課題で『検事の来訪』を扱う際は、これらのセリフを「ドラマチック・アイロニーの具体例」として引用できるようにしておくと、エッセイの説得力が大きく高まります。